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飲食業のブラック化は止められるか?ITの活用について [労働]


ブラックな業態が多いとされる飲食業ですが、ITの活用による生産性の向上について、分かりやすくまとめた記事があったのでシェアします。

【参考記事】
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160329-00088565-diamond-bus_all

飲食業と言うと、どうしても労働集約的で、手間をかけることに価値を見出す傾向が強いと考えられがちです。しかし、スマートデバイスの普及により個人のIT利用が進んだこと、クラウドの活用によりかつてのような大規模投資が不要になったこと、様々なサービス提供主体が参入したことなどにより、「効率化」と「高度化」をITで実現できる裾野が広がってきています。

「効率化」によりコストが下がり、「高度化」により付加価値が高まれば、当然一人当たりの生産性が高まることになり、従業員にも還元されることになるはずです。それができない企業は、市場での競争以前に、人手不足という競争に敗れ、退場を余儀なくされることになりかねません。

さて、日本経済において、飲食業をはじめとしたサービス業の生産性向上は大きな課題となっています。生産性向上には何らかの投資が必要です。しかし、これまでのところ、日本のサービス業の多くは、生産性への投資を従業員の長時間労働と超過勤務手当(もしくは未払い賃金)で代替してきたと言えるのではないでしょうか。

適正な投資は、ミクロな意味で競争に勝つためにも、マクロな意味で経済全体の活性化にも必要だと思います。ITに何ができるのか、サービス業の気づきに期待したいところです。

最低時給1500円は実現するか?賃金上昇トレンドを作るために [労働]

3月20日、新宿で最低時給1500円を求める街頭活動が行われ、経済学者や野党幹部も参加し、盛り上がりを見せたようです。ちなみに東京都の最低賃金は、2016年3月22日時点で、時給907円。それと比べると1500円はやはり破格です。就業者の多くを吸収する中小企業の収益構造を考えると、最低賃金をいきなり1500円にするのは、経営的にかなり難しいはずです。

しかし、経済成長の果実が賃金上昇に結び付かないという批判は、物価上昇に伴う実質賃金低下と併せ、根強いものがあります。今回街頭活動に参加された方には、おそらく経営者や政党の幹部もおられるでしょう。そこでまずは、彼らの組織で雇うアルバイトの時給を上げてみるのも、一興ではないでしょうか。

さて、個人的には、現状、労働市場の需給ひっ迫に伴う賃金上昇をもう少し待ってもよい場面かなとは思います。ただ、1500円まではいかなくても、賃金上昇圧力を政策で促進させるのは悪いことではありません。マクロ的な賃金上昇というトレンドがはっきりすれば、消費に好影響を与えることは間違いないでしょう。それによって企業業績にも良い効果をもたらすはずです。

オイルショックや円高、リーマンショックなど、経営を直撃する外的事情に対し、日本企業は知恵を絞り、設備投資などを通じ、生産性や収益を上げる努力をしてきました。人手不足や賃金上昇も、企業として本腰を入れて対応すべき問題だと思います。

【参考】
http://blogos.com/article/167876/


ハードワークは「当たり前」?!教員の労働時間に関する国会質疑について [労働]

教員の過重労働に関する国会質疑をシェアします。

【参考】
http://blogos.com/article/166829/

部活動などをはじめ、教員の過重労働を指摘する野党議員に対し、馳大臣や文科省幹部も、対策の必要性を概ね認めた答弁に終始しました。特に馳大臣は、「非常に学校が好きだった」として自らの教員時代のハードワークを認めつつも、それを「当たり前と思ってはいけない」と答弁しています。

教員不祥事の拡散による「聖職」イメージの崩壊、少子化で加熱する保護者の期待、リスクヘッジとしての各種報告業務の増加などにより、教師の方々を巡る状況はますます厳しくなっていると考えられます。もはや個々人のやりがいに依存するだけでは、適切な教育サービスを提供することに限界が生じているのかもしれません。その意味では、背景はやや異なりますが、介護や保育などとも共通するところはあるでしょう。

教師の疲弊は、当然ながら教育サービス全体の劣化をもたらし、その影響は後の世代に及びます。教師個々人に限界があるのならば、マネジメントから変えるしかありません。より良質な教育サービスを提供するために、アウトソーシングの活用や報告業務の簡素化など、生産性の高めている民間企業を参考とした、改善や投資が必要な分野なのだと思います。


待遇改善に限界も?保育士不足と介護の質について [労働]


保育士の不足による保育の質の低下が話題となっています。

保育士の確保や当面のモチベーションの維持には、短期的には待遇改善が必要でしょう。しかし、労働人口が限られ、他産業との労働者の争奪がある中、少々待遇を改善しても、絶対的な人手不足の状況は変わらないと思います。

その意味では、限られた人数で業務をこなすために、既存業務の省力化は不可欠と言えるでしょう。例えば、見守りや掃除、洗濯、保護者との連絡などについて、ロボットやIoTを駆使した機器の導入が一つ、外部コンサルなどを活用した業務プロセスの徹底的な見直しがもう一つ考えられます。

むろん、いずれも投資が必要です。もっとも、マイナス金利をはじめとした低金利の現状では、資金調達が相対的に容易なはずです。預金金利が下がれば、預金に代わる運用先を求める資金が市中に出回るでしょう。

政策的に保育士の数を増やすことも重要ですが、根本的には保育施設への大規模な投資が不可避ではないでしょうか。政府がある程度保証する債権の発行を特別に認めるなど、保育施設が投資資金を調達するための金融面での支援も、政府として考えるべきだと思います。

【参考記事】
http://getnews.jp/archives/1402355

ブラック企業と日本の雇用慣行 [労働]

違法な長時間労働や不合理なノルマ、パワハラなどが横行するいわゆるブラック企業の解説記事が面白かったのでシェアします。

【参考記事】
http://toyokeizai.net/articles/-/105353

その背景として指摘されるのが、日本的雇用慣行。特に、世界にも珍しい、職務と責任の範囲が限定されない雇用契約です。これにより、会社は労働者に対して労働時間も含め、非常に広範な指揮命令権を行使できることになります。

その見返りとして、企業は労働者に適正な賃金と雇用の保証を提供してきました。ところが、ブラック企業においては後者の見返りが抜け落ちてしまった、とのことです。

記事によれば、悪平等ではなく労働者の階層を認めることを提唱しています。責任や職務範囲が限定されない経営層やその候補者層と、法律上保護すべきその他一般の労働者層を分けるべきとのことです。

相互の流動性さえ確保されれば、労働者の「階層」自体は賛成です。ただ階層以上に重要なのは、そもそも契約と言えるかどうかが微妙な雇用契約慣行でしょう。雇用契約は、職務範囲などの権利義務についてきちんと説明を受け理解した上で合意する、ということが実務上少ないのではないでしょうか。

被雇用者の立場の弱さや企業の実際の業務に関する情報不足を鑑みると、それは不動産賃貸や自動車売買などのような通常の意味での契約とは言えません。

単に労働条件を法で規制するだけでなく、雇用をいかに契約に近づけるかが、ブラック企業問題を解決するカギになるのではないでしょうか。