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新宿ゴールデン街、とある動画の狂騒曲 [新宿]

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新宿ゴールデン街の「プチ文壇バー月に吠える」でバーテンとしても働く作家・ライターの山下素童氏、彼が人気芸人のyoutubeに出演した際の発言が、一部で批判されている。雑に言えば、ゴールデン街で飲むなり働くなりしている女性が性に奔放であり、いわゆるヤリマンが多いとか、過度なボディタッチやナンパも許される、的なニュアンスの発言である。

これに、ゴールデン街で働いたりそこでよく飲んだりする少なからぬ男女がSNS上で批判。「そのような街ではない」「そういうお客さんが増えることに不安を覚える」「ナンパ目的の客が増えるなら、働くのを辞めたい」などなど。

結局、山下氏本人及び彼が働いている「プチ文壇バー月に吠える」のオーナーである肥沼氏が、事実の誇張があり街への偏見を助長したとしてSNS上で謝罪。真偽のほどは不明であるが、動画の該当箇所につき、動画について権利のあるテレビ局に対し、山下氏自ら公開停止の働きかけをしているという話も流れてきた。

さて、新宿ゴールデン街で20年くらい飲んできた自分個人としては、当該動画に関し、まあ、愉快ではない感情はもちろんある。300件近い店のある街の1割にも満たない店で見聞き経験した話で「新宿ゴールデン街は~」的なことを語られたら、そりゃ違うだろとは思う。

もちろん酒場であり、酒が入り、年頃の男女がいれば恋愛なり性的なりの関係はあろうし、そういう目的の男女がいてもおかしくはない。しかし、男女問わず過度なボディタッチやしつこいナンパが街として許容されるかと言うと、決してそうではない。

そういう行為は通常店側から注意され、排除されるし、店を出入り禁止になることもある。また、度が過ぎた行為については、被害者は、弁護士なり警察なりに被害を申告し、民事刑事での責任追及がなされる。褒められたことでは無いが、長いこと飲んでると、そういうことも見聞きしてはいる。

つまり、ゴールデン街は、決して、治外法権ではない。酒を飲んで調子に乗ったら、それなりに責任は発生する。街は、性を求めに来るところではなく、あくまで、酒を飲むところなんである。

その上で、気になることが2点ほどあった。一つは、山下氏の軽率さ。もう一つは、当該動画作成そのものに関するビジネス上の甘さである。

一つ目。

冒頭述べた通り、山下氏は、パートタイムとはいえ、新宿ゴールデン街のバーで働く身である。その彼が、ゴールデン街のイメージをわざわざ悪くするような言動をしたのには、率直に驚いた。もちろん、ゴールデン街で働く人すべてがそこに愛着を持つべきとは思わない。いやいや働く人もいるだろう。

しかし、ゴールデン街で多くの人が働き、楽しんでいるのも事実である。山下氏の言動が、そういう人々への敬意や想像力を欠いたのは間違いない。加えて、当該動画は、テレビ局が作成する人気芸人の動画であり、個人のブログやSNSと異なり、はじめから多数の視聴を意図して作られている。そのような場とわかっていながら、事実を誇張し、偏見を助長するような言動をするのは、やはり軽率だと思う。

その意味では、山下氏の言動がゴールデン街で働く人や飲む人から批判されるのは、仕方ない。

肥沼氏の声明によれば、山下氏は、今回の言動を悔い、ゴールデン街を愛している旨を肥沼氏に涙ながらに語ったという。そして、「月に吠える」での勤務も継続するという。正直、そのような肥沼氏・山下氏の態度には批判も多い。辞めさせるべき、せめて謹慎期間を設けるべきなど言われているのを目にし、耳にしている。

山下氏にそのような愛着があるなら、ぜひ、今後の作家・ライター活動でその愛着を証明し、批判する方々を納得させて欲しいものである。

なお、肥沼氏によれば、「少しでも街に貢献していけるよう、全身全霊取り組ませていただきます」とのことである。肥沼氏、山下氏が、これからどのようにその取り組みを進めていくのか、その全身全霊ぶりをそれなりに期待したいとは思う。

二つ目。

今回の動画については、プロのビジネスとして不用心かな、という印象も強い。それは、発言をした山下氏自身ももちろんだし、そのような耳目を集めるバイアスをつけたいと編集した制作側の責任も少なくないと思う。

百歩譲って、個人のブログやSNSが拡散されてしまったのならまだ同情の余地もある。しかし、今回の動画は、テレビ局が作成したものだそうで、しかも人気芸人を起用している。いわばプロがカネ儲けのためにやった仕事である。芸人の影響力を使い、動画を多数の人に見てもらい、広告料その他の収益を得る目的のはずである。

そのプロの仕事で、事実報道ならいざ知らず、事実の極端な誇張でもって特定の地域にネガティブな影響を及ぼす偏見を垂れ流すことを問題無しと考えているのであれば、プロとしての資格を疑われても仕方ないのではないか。「動画だから、それなりに面白ければ、その辺は適当でいいか」、編集サイドのそのような配慮を欠いた思惑が透けて見える気がする。

例えば、吉本芸人が全員反社との黒い交際があるとか、性加害歴があるとか、そういったネガティブな内容の偏見が影響力あるメディアで面白おかしく拡散されれば、スポンサーたちは吉本芸人の起用を躊躇するだろうし、営業の妨害になりうることは間違いないと思う。今回の動画は、まさにそれである。

山下氏の言動の軽率さはもちろん、こういう、制作側の、影響力あるメディアに携わっているとは思えない言わば舐めた態度も、個人的には気に入らないのである。

さて、先にも述べた通り、新宿ゴールデン街は、基本的に酒を飲むところであって、それ以上でも以下でも無い。文化人が来ることもあろうし、クリエイターが来ることもあろう。サラリーマンが来ることもあれば、生活保護受給者がなけなしのお金で飲みに来ることもある。それぞれの店、例えば、「虎の穴」と「シネストーク」と「ゴッサム」と「チャンピオン」とは、明らかに空気感が違う。

それこそ、「新宿ゴールデン街は~」で一括りにできないところが、その面白さではなかろうか。さらに言えば、怒るなり苦笑するなり笑うなりなんなり、こんな騒動そのものを酒の肴にして飲んでしまう人々の強靭さもまた、新宿ゴールデン街の面白さ、楽しさには違いないはずなんである。



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