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与党PTが65歳を「現役」に。なすべきことは山積だ! [労働]

与党自民党内のプロジェクトチームが、高齢者が働ける社会作りについて提言をまとめました。これによれば、現在高齢者と分類される年齢の一つの目安である65歳を「現役」に、70歳を「ほぼ現役」ととらえ、それに即して社会制度を考え直すべきとのことのようです。

少子高齢化が進んで労働人口が減少すること、社会保障給付の負担を抑えること、実際に意欲と能力のある高齢者が少なくないことなどから、この方向性には合理性があると思います。一方で、健康状況や経験など、高齢者の状況には個人差が大きいことから、ただ現役世代として働け、と声をかけるだけでは、様々な無理が生じることは間違いありません。

提言を現実にうつすためには、職場環境のユニバーサル化は不可欠です。

例えば、目が弱い人向けの情報表示やディスプレイの開発、足腰が弱った人が作業しやすいオフィスの配置や機械による作業の省力化、長時間連続して働けない人のための勤務時間や職務フローの考え方の整理、さらに現役世代の健康管理の推進など、やるべきことは少なくありません。

高齢者の働きやすさをきっかけに、例えば妊娠中の女性や障害をもった方など、誰もが働きやすい労働環境を考え、そして積極的に投資すべきだと思います。さらに言えば、今後少子高齢化が急速に進む中国など、中心国、先進国にビジネスモデルとして輸出する仕組みも、併せて考えていくべきです。

少子高齢化というと負の側面が強調されますが、日本経済の仕組みを変える機会として捉える視点も持ちたいものです。

≪参考記事≫
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170413-00000077-asahi-soci

電通の過労自殺に関する、個人的かつ勝手な雑感。 [労働]

広告代理店大手電通における過労自殺が話題になっています。

本件、辞めればよかった、逃げればよかったという本人の意思や行動に関する意見、過労やパワハラなどの状況を認知して適切な手を打たなかった会社の責任を問う声、そもそも月百時間程度の残業時間を過労ということにも問題があるのではないか、など、様々な見解が飛び交っています。

ただ、個人的かつ勝手な感想を付け加えるのであれば、長い人生における人々の反応を想像すると、自殺という選択肢は、主観的な自我を防衛するためのものとして、十分にあり得るのではないかと思っています。

仮に退職などを選択した場合、確かに、ご本人は亡くならずに済んだでしょう。しかし、ご家族をはじめ、周囲はその方をどう見るでしょうか。「過労死しなくてよかった」という声よりは、おそらくですが、「せっかく入った会社を辞めるなんてもったいない」「なんでもう少し頑張れなかったのか」「しがみつけば事態が好転したかもしれないのに」、そんな、いわば失敗者としての烙印を押す声を聴くことの方が、圧倒的に多いのではないかと推測します。

そして、そのような烙印は、その会社で働くことを上回る成功を周囲に認めさせない限り、いやそれ以後でも、彼女が生きている間ついてまわるはずです。

入試や就職において努力して成功してきた人間にとって、そのような汚名は、そしてその汚名が人生において続くことは、耐え難かったのではないでしょうか。彼女は、一時的にせよ失敗者としての烙印を押されるくらいなら、成功者として他人から評価される時点で、その主観的な自我を守り、自分の人生を終えたかったのではないかと、勝手ながら想像してしまうのです。

もちろん、そのような願望は、追い詰められた結果であり、心身ともに落ち着いた状況での判断ではないかもしれません。しかし、仮に落ち着いた状況であっても、失敗者という周囲からの烙印と自分への失望は、とても大きな心の傷になったでしょうし、その傷を乗り越えるのは、かなり骨の折れることであるのは間違いないはずです。

確かに死ぬことは悲劇です。ただ、生きていさえすればこの方が必ず幸せになれたと楽観的に考えることも、難しいのではないかと思ってしまうのです。企業の労務管理等の改善は当然必要ですが、自殺は優れて個人的な話であり、制度的な改善には限界があるのかもしれません。

さて、私は、亡くなられた方と面識がありません。したがってここに書いたことは、勝手な想像、妄想に過ぎないことをお断りいたします。最後に、亡くなられた方のご冥福をお祈り申し上げるとともに、ご家族の方には心よりお悔やみ申し上げます。

【参考記事】
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161007-00000121-jij-soci

働き方改革の柱は?外国人労働者の受入など [労働]

政府の「働き方改革実現会議」における議題の概要について報じられています。

「同一労働同一賃金」「介護・子育て」「教育」など様々な論点が上がっていますが、やはり、「外国人労働者の受入」を巡る議論は避けられないでしょう。記事によれば、現在日本では技能実習生を含め約90万人の外国人労働者がいるとのことですが、今後人手不足が懸念される介護や農業などで、より積極的な受入を進める方策を検討するようです。

個人的には、すでに多くの外国人が日本の様々な現場で合法的に働いている以上、現状でも、外国人労働者は重要な労働力だと思います。しかし、外国人労働者の受入に関する規制を緩和する前に(あるいは並行して)やるべきこともまた、数多くあるのではないかと考えます。

一つには、そもそも外国人労働者にとって、日本が魅力的な職場ではなくなりつつあるという事実です。

長引くデフレによって世界の経済成長から取り残された日本の賃金は、相対的に下がっています。また、消費者の多くは日常生活で英語を使うわけではありません。加えて、近年のブラック企業批判や、外国人技能実習制度悪用の相次ぐ摘発があります。賃金もそれほど高くなく、せっかく学んだ英語も通じず、労働条件もそんなによくないとなれば、他国との労働者の獲得競争で日本が優位に立つことは困難です。逆に言えば、外国人労働者を招くためには、賃金を上げ、英語ないしは多言語の活用を広げ、労働条件を明確化する必要があるでしょう。

次に、日本の潜在的な労働資源は、ちょっとした工夫でまだまだ活用の余地があるのではないかと思います。

介護離職の防止や保育所の整備もそうですが、体力の衰えた高齢者や障害を持った方なども、機械や設備のユニバーサルデザイン化を進めることで、労働市場への参入は可能だと思います。また、9時5時オフィスに拘束されるような慣行では働けない人も、在宅勤務のオペレーション整備などで働ける可能性はあるはずです。このような働き方の改革の前提には、ロボットやIoTなどの先端技術が必要であり、それらへの投資喚起という意味でも、既存労働力の徹底活用(≒1億総活躍?)を進めるべきだと思います。

さらに言えば、現在すでに日本にいる外国人労働者の生産性向上や、日本にいながら政治的事情で働くことができない外国人の積極活用も重要です。

例えば、日本には難民申請中のクルド人が約2000名おり、その多くは「仮放免」などの法的に不安定な状況におかれ、合法的に就労することができません。ちなみに、埼玉県蕨市などでは、在日クルド人が積極的に日本語を学んだり、ボランティアのパトロールを通じ地域住民との共生を図ったりしています。これらの人々に就労許可を与えれば、新たに受け入れた外国人労働者よりも、効率的に働いてもらうことができるはずですし、文化的な摩擦も少なくなるはずです。

外国人労働者の受入は、労働力不足解決の決定打と考えられがちです。もちろん、一般論としては、日本に多様な人材が入ってくるのは望ましいでしょう。しかし、外国人労働者によってどんなに企業が利益を得たとしても、文化的な摩擦やそれに伴う社会不安は、結局は社会、ひいては納税者が支払うコストになります。

外国人労働者の受入とともに、労働力不足を補う他の様々な方策も、同じ程度の重要性を持つのではないでしょうか。

【参考記事】
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160914-00000013-mai-soci

政府が残業規制強化に着手。必要なのはマネジメントの意識改革と・・・ [労働]

残業規制に関する長谷川豊氏の意見が面白かったのでシェアします。(末尾)

それによれば、政府が残業規制をしようが、マネジメント層の意識や行動が変わらなければ隠れ残業が横行するだけであり、現状もすでにそうである旨を指摘しており、解決策として、2点挙げています。個人的にはそのうちの一つ、管理職が自分で使うないしは自分で知りたいと思う情報に関する資料を自分で作ること、という点が印象的でした。

実際、官公庁でも民間企業でも、トップないしはマネジメント層が好奇心を満たすために調査や資料作成を指示するケースは少なくありません。また、公的機関で言えば、行政だけでなく、議会での議員の質問対応にもそのような側面があります。これらが多くの残業を生み出しているのは間違いないでしょう。

マネジメント層や議員などのお偉いさんにパワポやエクセルを覚えてもらうのも一つです。もう一つは、大規模なWebやシステムへの投資と、情報の整理や集約で、誰でも自分の必要な情報に簡単にアクセスし、編集できる仕組みを作ることだと思います。

例えば、地域情報システムのRESAS(https://resas.go.jp/#/13/13101)をいじれば、自治体経済に関して様々な情報を得たり、それらを組み合わせたりすることができます。また、営業管理用に様々な情報を数クリックで組み合わせることのできるソフトやデータベース商品も開発されています。

残業の抑制をはじめ働き方の改革には、意識改革だけでなく、ツールを導入し、活用する現実できな投資が必要なのだと思います。

【参考】
http://blogos.com/article/189683/

賃金が上がらない日本経済。。。その背景と対策は? [労働]

日本の賃金に関する解説記事です。

【参考記事】
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160411-00046549-jbpressz-bus_all&p=1

現在の日本の失業率は3%強。ほぼ完全雇用、すなわち働く意欲のある人はどこかで働くことができる雇用がある状態で、労働力の需要に対し供給は逼迫しています。需要と供給の原則に従えば、労働需要が多ければそれだけ労働に対する価値が高まり、賃金が上がるはず。しかし、政権の賃上げ要請にも関わらず、企業の動きは緩慢です。

記事では、背景として労働市場の構造を挙げています。具体的には、比較的賃金の安いシニア世代と女性の労働市場への参加と、いわゆる正社員の解雇規制の厳しさを理由とした人件費抑制の二点です。

個人的には、移民の積極的な受け入れに反対論が強いことと、女性やシニアの労働市場参入にも限界があることから、いつかは労働力不足に伴い、日本経済全体に強い賃金上昇圧力が来ざるを得ないと思います。また、その動き自体は悪いことではないと思います。

ただ、賃金上昇圧力にさらされた企業は、少なくとも短期的には収益の悪化を余儀なくされることでしょうし、中長期的には、不足した労働力でも収益を上げられるビジネスモデルを作らざるを得ないでしょう。

政府としては、来るべき賃金上昇圧力に企業がスムーズに対応できるよう、支える役割が求められます。

具体的には、少人数でより高い生産性を確保できるようにする設備やシステム改善への投資を促す仕組みや、限られた労働力をより生産性の高い領域にシフトできるよう、解雇や異動に関する規制の改善などが考えられます。また、賃金が緩やかに上昇するトレンドを人為的に作り、賃金上昇圧力へのハードランディング対応を緩和することも大切です。

賃金は多くの人々にとって非常にセンシティブな関心事項。衆参同日選挙がささやかれる昨今ですが、引き続き、各政党の経済政策に注目したいところです。