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山本夏彦、コラムたちに寄せて [読書]

最近折に触れて、山本夏彦氏のコラムを読む。

斬新な知識があるわけでもなく、流麗な表現があるわけでもなし(失礼!)。
でも面白い。

面白さの根は、人間に対する醒めた信頼と愛情なのだと思う。

おそらく有史以来、そしてこれからも、大衆も貴顕もマスコミもみな一様に、
醜くあさましく滑稽なのだろう。無論山本氏も、読者もその例外ではない。

読めば、あげつらわれてる大衆の姿にニヤニヤし、自分の胸に手を当てれば、
背筋が凍り文字通り我に帰る。

小林秀雄ならその機能をきっと「常識」と言うだろう。

人間は大概忙しいふりをして、考えることを他人に委ねがちだ。
しかし、ふと我に帰ったら、自分を侵食していた他人に慄然とせざるを得まい。
本当は、一人一人考えなど違うに決まってる。

山本氏のコラム は、そんな当たり前のことに気づく触媒だと思う。

山本氏が死んでしばらく。惜しむらくは、当時も今も、これからも、
そんな自明すぎる当たり前は見失われていると思ってしまうのである。

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