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思い出横丁、岐阜屋のタンメン [新宿]

タンメンが好きである。

塩味のスープに麺がつかり、その上に炒め野菜が鎮座しているアレ。
街の名も無き中華屋のタンメンもよいし、日高屋も悪くない。

しかしここは敢えて、岐阜屋のタンメン(580円)を推したいのである。

先日久々に、新宿は思い出横丁に立ち寄り、岐阜屋のカウンターに座った。
まだ客が少ない午前中のこと。

いつもなら、酎ハイに蒸し鶏、そしてきくらげ玉子炒めのコンボなのだが、
どうも麺への欲望が抑えがたい。

で、タンメン。

カウンターの中、先ほどまでスポーツ新聞片手に他の客と語っていたおっさん、
注文とともに、まずおもむろに麺を取り出して湯だった鍋に入れ、それと別に、
中華鍋に油をひく。

鍋が熱くなったころを見計らい、豚肉の欠片、そして野菜を放り込む。

玉ねぎ、にんじん、きくらげ、キャベツ、もやし、ニラ、それぞれ、
鍋に着地するごとに、油の爆ぜる小気味良いが音が耳と胃袋を叩く。

お玉でぞんざいにすくわれた塩コショウで味をつけられ、仕上げに
ペットボトルに入った茶色い液体が注がれ、鍋を一回し二回し。
すると今度は鍋にスープが注がれ、炒め煮の過程に入る。

そうこうするうち麺は茹で上がり、網ですくわれた麺はどんぶりにて待機。
その上に、炒め煮られたスープと野菜の混在した何かがざんぶりと。

軽く体裁を整えて、いざ、タンメンの見参なんである。

汁を啜れば、元の出汁の味、塩コショウの味に加えて、野菜どもの何とも
言えないかそけき滋味が溶け出している。その一方、野菜を噛みしだけば、
ジャキジャキした食感と、それぞれの風味はしっかり残っている。

良い。

麺の茹で加減も上々、汁と麺と野菜を交互に啜り食らうことしばし、
いつしかどんぶりは空になっている。

たおやかな満足感。

麺はもちろんだが、野菜を炒め煮にし、火が通るタイミングを見計らわないと、
決して美味いタンメンにはなるまい。

おっさんが鼻歌交じりのような佇まいで作ったタンメンは、
素材の美味さを引き出した、まごうことなき料理なのである。

油と塩と炭水化物に加え、ビタミンやミネラルや食物繊維まで加わった
タンメンは、もはや完全栄養食と言っても過言ではなかろう。

そんな中でも、値段と美味さとロケーションと風情で、岐阜屋のタンメンは、
頭一つ抜けていると思うのである。

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