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ぶんご商店、すっぽん鍋、出汁割 [新宿]

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新宿に2店舗ある海鮮が美味い居酒屋、ぶんご商店で飲んでいると、あるメニューの張り紙が気になった。

「すっぽん鍋2500円」

ぶんご商店は、1000円も出せばかなり美味い刺盛を出してくれるし、その他の肴も酒も、かなりリーズナブルだ。そんな中、2500円という強気の値段設定。興味はそそられるが、その日は刺身とあら煮をキメていたこともあり、すっぽん鍋は頼まず撤退。

しかし、どうにも記憶の中から離れようとしないのである。

ある日、何気なくTwitter(X)を逍遥していると、友人のtweet(ポスト)に、ぶんご商店のすっぽん鍋を食ったと報と、その写真が。薄い醤油色の液体に、葱やら何やらが浮き沈みしている様子。おお、ついにやったか。味も悪くないらしい。すっぽんなど、まともに料理屋のコースで食おうとすれば、2~30,000円検討はするだろう。それが2500円か。

10年以上前に上野でスッポンを買ってゴールデン街の某店で煮て食って飲んで以来、そういえばすっぽんを食っていない。以来、脳裏にすっぽん鍋が明滅するようになる。

仕事帰りのある寒い夜、明滅するスッポンは、まるでカマキリに寄生するハリガネムシのように、僕の足を歌舞伎町のぶんご商店に運んでくれた。カウンターに通され鎮座。

すっぽん鍋だけだとちょっと気恥ずかしいので、鍋が来るまでのつまみに細切りこんにゃくの和え物を頼み、ホッピーセットではじめることに。ぶんご商店のホッピーセットは、ホッピーに添えられた中身の焼酎が、氷の入ったグラスにではなく、カップで運ばれてくる。これはよい。

周囲、自分より後に頼んだ品物がどんどん運ばれてくるのを横目にこんにゃくをつまみ、ホッピーを割って飲み始める。よもや、オーダーが通ってないのでは。そんな懸念が脳裏をかすめたとき、目の前に鍋敷きが置かれ、ようやく、湯気立つ鍋が登場した。

一人前強くらいの大きさの鍋に、醤油仕立ての汁。具材は、葱、麩、薄切りにした大ぶりの椎茸、そして、ところどころに浮き沈みする亀すなわちすっぽんの肉片である。椀によそって汁を一口。醤油と出汁ベースに、すっぽんの風味はややほのかに、むしろ椎茸の香りが強い。こういう感じか。

葱の甘み、汁の滲みた麩の良さは言わずもがな、椎茸はやはり主張が強い。で、すっぽん。肉はもちろん、皮膚や甲羅周りのゼラチン質の部分や、コクのある肝もきちんと入っており、コンパクトながら、すっぽんの全体がそれなりに楽しめる。臭みや苦みはほぼほぼ無く、魚でも鶏でも豚でも牛でもでも無い何かである。

なるほど、悪くない。

骨や甲羅についた身を啜ってすっぽんを堪能し、汁を残して一通り食い終えた。具材が山盛りと言うわけではなく、脂っぽくもないので、それほど腹にたまるわけではなさそうだ。雑炊を頼むか悩んだが、ここは出汁割でやることにした。赤羽の丸健水産はじめ、おでん屋などでよく見る出汁割、いい年をして飲まず嫌いでいたのである。

出汁割といえば日本酒が常だが、目の前にはホッピーの中身である甲類焼酎がある。こいつで試してみることにする。鍋の残り汁を入れた椀に焼酎を注ぎ、箸で軽く混ぜて飲む。

ほう。

すっぽんと椎茸の効いた汁の味はそのままに、アルコールの酔いがふわりくる。よい。日本酒だと良くも悪くも味が多く、それを意識した上での飲まず嫌いだったが、甲類焼酎だとほぼほぼアルコールの風味しかない。これなら、出汁の味を邪魔されずに楽しめる。

楽しくなって、汁と焼酎を割っては飲み割っては飲みを繰り返すうちに、鍋と焼酎のカップは瞬く間に空になった。雑炊も悪くないとは思う。しかし、自分で適当に作っては飲む出汁割は、これはこれで佳いものだ。

心地よい満足に誘われて店を出る。すっぽんはもちろん、出汁割の良さを認識できたのは素晴らしかった。今度は、日本酒で試してみることにしたい。

ぶんごのすっぽん鍋、そりゃ何万円もするようなすっぽん料理と比べたら、まあ引けを取るかもしれない。でも、僕のような稼ぎの無い人間でもたまには食えるすっぽんには、確かな価値があるはずだ。それは、世知辛い日常に、明日も生きてみようと思わせる、ささやかな喜びなんである。

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