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上野、アメ横センタービル地下、スッポン [その他]

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上野、アメ横の様々なお店を冷やかしたり、食べ歩きしたりして回るのは楽しい。中でも、センタービル地下の食品街の愉快さは白眉だと思う。

御徒町側、上野側、どちらからでも構わないが、とりあえず階段を降りる。そこに広がるのは確かに食料品店。でもそこはかとなく感じる違和感とワクワク感。なんというか、「日本」が薄いのである。

地上のアメ横に勝るとも劣らない密度で並べられている、魚、肉、乾物、缶詰、調味料、その他とりどりの食いものたち。中国系が目立つが、韓国系、タイ・インドネシア系などの様々な文字列が明滅し、日本でも欧米でも無い、アジアのどこかとしか言いようが無い臭いが漂っている。

魚であれば、コイやフナ、クルマエビやアワビを買う生け簀がある。そうかと思えば、氷を敷いた台に「魚」としか書かれていないシールを貼られ、一尾丸ごとぶっきらぼうに並べられた、ボラ、タイ、スズキ、タチウオなどなど。変わったところでは、タウナギやタニシ。さらに、いわゆる上海蟹と言われるモズクガニは縄で縛られ大きさごとに値段をつけられ、赤い網の袋の中では、生きたスッポンが物憂げに手足をうごめかせている。

肉であれば、豚、鶏を中心に、いわゆる肉だけでなく、それらの臓物、つまり胃であり腸である肺なりレバーなり脚なり、その他なんなりの様々な部位が、一般家庭ではまずお目にかからない凍らせた無造作な塊のまま売っている。ジュースなのか保存食なのか、そもそも中身がなんだかわからない缶詰や調味料も実にバラエティに富み、野菜や果物はやや少ないが青いバナナも輝き、乾物もいろいろある。

実に面白いのである。

そう言えば、10年以上前だろうか、ここでスッポンを買って友人と煮て食ったこともあった。

ある休前日、新宿ゴールデン街のとあるバーで、酔った友人と、アメ横、そしてスッポンの話になったのである。カウンターに立つ料理好きな女性、「明日そんなに繁盛しないだろうし、もし買ってきたら、ここで煮てみようか」とのたまう。それならと、30を越した酔漢二人、「お前、明日上野にスッポン買いに行くからな!覚悟しておけよ」「おうよ!」と応じる始末。そのとき、時刻は午前三時。

翌昼過ぎ、二日酔いに揺蕩いながら男二人、上野で落ち合う。センタービルの地下に降り、良さげなスッポンを探して彷徨う。だいたい、100グラム500円くらい。一匹、5~6千円検討だろうか。亀を見つめる我々不審者二人に、「このスッポン、立派よ!」と声をかける店員。見ると、やや色が薄いが、丸々としたスッポンを手にぶら下げている。いいね。確か7000円にて購入。

スッポンを捌いて肉片にしてくれる間、「血、飲む?」と言われた。確かにスッポンの血は名高い。だが二人とも前日の酒が祟って血の匂いだけで吐きそうだ。飲める気がしない。持ち帰りはできないとのことで、血はあきらめる。で、バラバラになった亀肉をぶら下げ、念のためバーの女性に連絡すると、「うん、覚えてるよ、持ってきたら煮てみようよー」と快諾。途中野菜なども買いつつ、新宿へ向かう。

カウンターしかない、新宿ゴールデン街のとある小さなバー。ネットで調べたとおり、大きな鍋で湯をぐらぐら沸かし、下茹でし、三人で手分けして薄皮を剥く。薄皮を剥いたら、亀肉を本格的に煮始める。途中、白いアクが鍋から入道雲のように立ち上り、すくってみると、まるでとろろ汁のような固さである。スッポンをきちんと食うのが初めての自分としては、ただただ興味深い。

アクをすくうなり、他の野菜の下ごしらえをするなどしているうちに、あっという間に2~3時間が経過。大鍋一杯のスッポン汁が出来上がることになった。おそるおそる汁をすすると、確かに美味い。カツオでも昆布でも無いし、鶏でも豚でも無い、得体のしれない旨味がある。なんだこれは。

肉の部分は、細切れになって溶けてしまったのかあまり食ってる感じがしなかったが、ぶるぶるとしたゼラチン質部分の食感は楽しい。プロの料理人が作ったらまた違うとは思うものの、スッポンの汁が美味いことだけは、はっきりと理解できる代物だった。

それから10年以上、折に触れて散策するアメ横のセンタービル地下は、今もなお、アジアのどこかのような、蠱惑的な食料品の市であり続けているのである。



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