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紀伊国屋、モンスナック、カツカレー [新宿]

いつの間にか、モンスナックが紀伊国屋ビルに戻ってきていた。

とろみが付いてない、シャバシャバとしたスープ状のカレーが名物の店。年に一回くらいは顔を出しては、カレーを飲み下すのを常としていた。

あるときは、朝どころか昼まで飲んだ後にするすると喉と胃袋に滲みるカレーの滋味に感謝し、またある休日のランチ時に訪れ、常と異なるややもったりとしたダル(豆)カレーに舌鼓を打っていると、カウンターのはす向かいにいた知人N氏に気が付いて目が合い、お互い気恥ずかし気に会釈したこともある。

紀伊国屋ビルの改装に伴い近隣の別店舗で営業をしていたのだが、どうも紀伊国屋に無いモンスナックには気が進まず、行かずにいたのである。それが、帰ってきた。

で、夜の用事が済んだときに行ってみたのである。

以前は、店員が中を通れるU字状のカウンター席のみだったが、改装後はテーブル席とカウンター。店内に貼られていた有名人たちのサイン色紙も今は無く、歴史を感じさせるものは何もない。むしろ、モダンな感じすらしないでもなく、ちょっとだけ違和感。

とはいえカツカレーを注文し、待つことしばし。

運ばれてきたカツカレーの姿に、まずはほれぼれする。モンスナックに限らないが、カツカレーは好物なのだ。トンカツも好きだし、カレーも好き。カツカレーには、そんな欲望を存分に満たそうとするパワフルな業の深さがある。かつ丼もよいが、カツカレーの方が業が深いと思っている。褒めてる。

いそいそとカツをカレーにひたして食らいつく。カリ、ジュワ。揚げたてのカツの衣の食感に、口の中に広がる豚の脂と肉汁。それらを包むカレーの出汁とスパイス。モンスナックのカツはカレーと合わせるためかやや薄い印象だったのだが、心なしか、以前よりカツが厚くなった気もする。

ついで、カレーのみをスプーンで掬う。ベースはポークカレーであり、カツと含めて豚肉&豚肉。カレーにほとびた豚バラ肉のほろりとくる味わいは素晴らしい。もちろん、カレーはとろみのついてないシャバシャバだ。スープのように啜れば、カレーの香りと出汁のコクがきちんと立ち現れる。

佳き。

途中、知人のG氏が近くに席を取ったのが見えた。向こうも僕に気が付いたらしく、やはり、苦笑いしつつ軽く会釈し合う。

ともあれ、あとはほかほかの白飯で、カツとカレーのアンサンブルを楽しむのみだ。中年の衰えた消化器に喝を入れつつ、カツを咀嚼し、カレーと白飯を吸い込んでいく。皿は瞬く間に空になる。付け合わせのミニサラダでさっぱりし、満足満足。

カレーの名店、カツカレーの名店は数あるし、モンスナックよりも評判が良い美味しい店はあるに違いないが、それでも、モンスナックには、一抹のかけがえなさがある。

時は移ろい、人は死に、街は変わる。それは仕方ないことだ。自分だって10年前の自分とはいろいろな意味で変わっている。それでもなお、変わらない思い出の象徴のようなものが人や街に残っていると、何とはなしに、嬉しいではないか。

モンスナックのシャバシャバのカレーは、自分にとっての新宿のそんな嬉しさを灯してくれるものの一つなんである。

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