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新橋、立ち喰い寿司、あきら [食べ物系]

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先日の昼時、新橋の立ち食い寿司あきらに行ってきた。

とあるビルの地下一階。予約は受け付けて無いそうで、当日行って並ぶ。13時ころ訪ねると、店員女性から、14時ころの入店になるとの案内。寿司屋の隣、夜からの営業であろう閉まっているとんかつ屋がそれなりに美味そうに見え、空腹の身には眩しい。

行列に並んでいる間、寿司と飲み物の注文を取られる。寿司は、その日のネタと一貫あたりの値段を書いた紙が回ってきて、それぞれのところに食べたい個数をチェックする形式。ネタによるが、500~1,000円程度。なお、原則として、追加注文はできない。

これは悩ましい。回転寿司ならば、基本10皿、つまり20貫は食うところだが、普通の寿司でそれは若干多いだろう。やはり10貫くらいか。むむむ。10~15分ほど頭を悩ませ、以下のラインナップに決める。

・漬けマグロ
・マグロ赤身
・シマアジ
・コハダ
・スミイカ
・はまぐり
・ヤイトガツオ
・ウニ
・マダイ昆布締め
・白甘鯛昆布締め

いつもなら酒、つまり日本酒は欠かせない。しかし、その日は前日に痛飲しており、若干頭がふわふわする。昼飯時でもあるし、酒はお預けにしよう。そうこうしているうちに、先客たちが会計を終えぞろぞろと旅立っていく。寿司への思いが募る。で、入店。

カウンターは、L字型で8席ほど。狭い。椅子は無く立ち食いである分、ゴールデン街の店よりも狭い。カウンター内には職人さんがおり、あとはホール?の若い女性がカウンターと外を行ったり来たり、立ち働いている。いつしか、めいめいの席にお茶なり酒なりの飲み物が出され、いざ、寿司がはじまる。

一貫一貫握られる赤シャリの寿司は、総じて、各々大なり小なりきちんとした仕事が施されていて、素晴らしかった。印象に残ったものをいくつか挙げておこう。

■ヤイトガツオ
何かと思ったが、カツオではなく、スマガツオのことらしい。濃い赤身の色が鮮烈。口に入れれば、カツオのぎゅんとくる野趣強い旨味をそのままに、脂がじんわりまろやかで、かすかに柑橘の香り。寿司としての完成度が高い。

■はまぐり
まず大きい。一貫ではあるが、口の小さい人なら切り分けてもらってもいいかもしれない。そして、貝の香りがガツンときて、適度な火の通り方で歯応えが絶妙な身を噛み締める快感、溶ける滋味。仕込まれたツメの甘じょっぱさがまた心憎い。

■ウニ
いい年だし通ぶりたいので、ふだんあまり頼むことは無いのだが、せっかくだしと注文。宮城のムラサキウニ。黄色い輝きが軍艦に山と盛られる様に心躍る。それを口に入れて噛み、シャリと海苔の風味の中にとろけほどけていくウニの香りとコクには、ただただ美味さしかない。

追加はNGと聞いていたが、その日はネタの都合で、追加OKとのこと。いささか悩みながら、周囲の人々が食べていた北寄貝と、〆のトロたくがどうしても気になり、アディショナルタイムへ突入。

■北寄貝
はまぐり同様、大きい。貝の身を噛み締めるたびに切ないくらいの潮の香りが口の中に弾けていく。口の奥、舌の付け根にまできっちりしみ込もうとする貝の旨味ときたら、もう堪えられない。

■トロたく
〆の一品らしい。シャリよりマグロの方が多いのではないかと思う。手巻きに近い、緩めの巻き加減で手渡しされる。頬張って食うと、きっちりマグロがシャリと絡み、たくあんの酸味塩味がキリリ。

寿司は言わずもがなだが、職人さんと店員さんの織り成す接客の雰囲気も、心地よかった。正直、美味い寿司でも、狭い店内で緊張感が走ると美味さも半減してしまう。

寿司の会話はもちろんだが、職人さんの「寿司のあと、ラーメンとか食べたくなりますよね。俺がラーメンやるなら、煮干し。自信ありますよ」とか、店員さんの「(職人さんに)ビール飲ませないでくださいね。おしっこ近いので、トイレに行ったり来たりになっちゃいますから」などの軽口も、軽妙でよい。

いやはや、久しぶりに、寿司を堪能した。

普段回転寿司が関の山の身分として、回らない寿司は確かに安いものとは言えない。そうそう行くことはないだろう。ただ、寿司と、それを握り食らう人々の空間は、たんに生きるために栄養を取るということだけではない、かけがえのないものがあるのかもしれない。大袈裟に言えば、それは文化ではなかろうか。

健康で文化的な生活を送る権利は、日本国憲法にも定められているではないか。

せめて四半期に一回くらいは、寿司を堪能できるこういう健康で文化的な時間を設けたいし、そのために生きて働くのも、悪いことではないはずだ。そう言えば、注文はしなかったが、じくじく炙ったのどぐろの寿司がたいそう美味そうで、「先に言ってよ」と思わされた。次回こそ頼みたい。

そんなわけで、ぜひまた訪れたい、新橋の立ち食い寿司なんである。



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