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やきとん、東十条、埼玉屋 [食べ物系]

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「やきとんの概念が変わりますよ」

そう何度ものたまう友人に誘われ、あるとき、東十条駅に降り立った。目指すは、やきとん屋の埼玉屋。15:30に店の前で待ち合わせとのことだが、調べてみると開店時間は16:00。少なくとも30分は待つことになる。もっとも、その友人からは、14:30には現着の旨連絡が来ており、自分よりも1時間も長く並んでくれているらしい。

ありがたいが、「概念が変わりますよ」という発言も含め、何やら仰々しい。仰々しいのは、当日だけではない。埼玉屋のルールについても、事前に何点か聞いていた。

・他店から飲んで来るのはNG
・アルコール、ドリンク類の注文はマスト
・メニューは原則やきとん9本からなるコースのみ
・サイドメニューもあるが、それは基本店員から促されたタイミングでのみ注文
・写真撮影NG

主なものは以上のとおり。ごちゃごちゃうるさいとは思ったものの、所詮自堕落な日常だし、まあたまにはそういう飲み食いも悪くなかろう。東十条駅北口をぶらぶらし、思いのほかの賑わいにいささか驚きつつ、ほぼ時間通りに店前につく。すでに10人程度の行列で、友人は二番目辺りに付けていた。入るときに一緒にということで、列の最後尾に並ぶ。

小雨をやり過ごしながら待つこと30分あまり、店の扉が開く。割と新しく清潔感ある店内。上下に平べったくしたようなコの字のカウンターが中心で、コの辺の辺りに炭火の焼き台が鎮座している。店の端にテーブル席がいくつか。カウンターは即満席だ。

僕らがホッピーとレモンサワー、他の客も思い思いの飲み物を注文すると、コースが始まる。まずは、クレソンと大根のサラダ。草をもしゃもしゃ食ってるうちに、いよいよ肉類が登場だ。

最初に牛串。生でも食えるとのことなので、生で頼む。タレにひたした肉を口に入れると、最初口の中がひんやりし、そして脂の旨味がまったりとろける。そうこうするうち、シロが焼き台に上がり、香ばしさが店内に立ち込める。焼きあがったシロはふうわり、それでいてじゅわっとしていてよい。

レバー串は、「甘いレバー」と言われるとおり、噛み締めるとじんわりした甘さとコク、そして確かなレバーの風味が活きている。バターをまぶして食うチレ串は、サクふわな食感と心地よい臓物の香りに、じくじくとしみたバターが得も言われぬアクセントとなっている。

串モノだけではなく、折に触れて出てくるサイドメニューたちも素晴らしい。レバー焼きは、串と異なり、オリーブオイルとバルサミコで味を調えられてより力強い風味を発散し、「甘いレバー」の新たな横顔を見せてくれる。煮込みは、ほろほろとした肉の旨味は言わずもがな、濃厚なシチューのような汁をバゲットに合わせると、これはもう、堪えられない。

洋風の味付けに絆されてか、いつしか、ホッピーやレモンサワーに加え、スパークリングワインも注文。酒と肉の愉悦にしばし浸る。最初は仰々しく感じた各種ルールもいつの間にか慣れ、大将の軽口や肉のアピールも学びとエンターテインメントとして入ってくる。これはこれで快適だ。

なるほど。

埼玉屋、諸々のルールなどから頑固おやじの保守的な店と思っていたが、あにはからんや、その料理は新しさと工夫が詰め込まれたものだった。

ふだん食べている焼き鳥とかやきとんも大好きだ。ただ、埼玉屋のように、良い肉を、良い臓物を、どうやったらもっと美味く食べられるかを追求し続ける、どこか求道的な姿勢の店があっても良い。やきとんの概念が変わったかは別として、肉料理にはまだまだ可能性があるのかもしれない、そんなことを思わせる埼玉屋体験であった。

ぜひまた訪れたい店なんである。



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