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2022年参院選雑感、政治改革の崩壊と新たなストーリー [政治]

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7月10日投開票の参議院議員選挙の結果が確定した。至極大雑把に言えば、自民と維新の勝利、そして、立憲民主党の敗北である。

自民党が議席を増やし公明党はほぼ横ばいと、与党は安泰。野党は、立憲民主党が大きく議席を減らし、その分維新が伸びた。共産、国民は微減。れいわと参政党とN国が議席を獲得。社民党は1議席を死守した格好である。

今回の当選者数に限れば、野党第一党の座は立民から維新に移り、依然国政では最大の野党であるはずの立憲民主党の退潮が印象付けられた選挙だった。

この結果については、国会において改憲を肯定する勢力が三分の二を超え、国会による憲法改正発議が一段と近づいたこと、ある意味イロモノ扱いされていたN国や参政党が議席を獲得したことへの懸念など、様々な感想がみられる。

ただ、個人的に思ったのは、90年代前半のいわゆる政治改革が、名実ともに破綻に向けまっしぐらだなあという感慨だった。

1955年の自民党の結党を機に、自民党に、改憲に必要な三分の二の議席は取らせない代わりに政権を維持させてきた55年体制。その下で自民党は、派閥抗争で活力を維持してきたことに加え、当時の社会党を中心とする野党とは、表での論戦とは裏腹に、国会対策での取引すなわち国対政治を通じて顔を立てあっていた。

派閥や国会対策における意思決定の一般国民から見た不透明さに加え、自民党の各派閥があたかも政党のように候補者を出す中選挙区制において、派閥による巨額の資金集めが不正献金の温床となっていたこともあり、政治改革が唱えらえるようになる。

政治改革の引き金は自民党内最大派閥竹下派の跡目争いではあったものの、ともあれ、政治改革の流れの中で、自民党は一時政権を失い、非自民連立による細川政権の成立。

政治改革の具体的な裏付けとして、候補者選定を派閥から党に移すための、小選挙区制の導入をはじめとした選挙制度改正、そして、派閥での資金集めを抑制するために、政治資金規正法の強化と政党助成金制度の創設などがなされた。

自民党内の派閥や与野党の国会対策よりも、政権交代可能な二大政党による公の国会論戦で意思決定をしていこう。これら政治改革の主眼は、そこにあったとされる。

その後、自民公明による政権から民主党への政権交代、ついで、民主党から自公への政権交代もあり、問題をはらみながらも、自民・民主の二大政党を軸に、政治改革が願った方向性で進んでいたのではないかと思う。

しかし、2012年末、衆院選の勝利により自民党・公明党が民主党から政権を奪取して以降、二大政党はどんどん怪しくなってくる。野党となった旧民主党勢力の低迷である。

自民党の安倍政権、菅政権、そして今次の岸田政権に至る約10年、民主党政権を構成した勢力は、国政選挙で与党を脅かすことが一度たりともできず、あまつさえ分裂を繰り返し、党勢を挽回することをできずにいる。特に、かつての民主党の中心である現在の立憲民主党にその傾向が著しい。

そして今回の参院選。現在の立憲民主党は、政権を脅かすことはおろか、かつて地方政党とされた維新に猛追され、野党第一党すら危うい。まして、自民党は議席を増やしている。

政党支持率の推移などを見るにつれ、旧民主党系が政権を奪還することは、当面のところ望み薄である。支持率を伸ばしている維新も、単独ないしは自民以外との連立で政権を取るには、まだまだ先は長い。その意味では、政権交代可能な二大政党制を目指す政治改革は、その提唱から約30年を経て、ほぼほぼ崩壊したと考えてよいのではなかろうか。

その原因や背景はいろいろあろうが、政治改革が崩壊しても、政治は続く。

自民党内の派閥抗争と社会党との国対政治が特徴的だった55年体制。政権交代可能な二大政党制を目指した政治改革、いわば93年体制。そして、国政における自民一強が強く印象付けられ続ける昨今の政治状況。

今回の参院選含め、ここ数年の国政選挙で、経済、外交、安保、地方自治など、あらゆる政策課題に対しそれなりの見識を持つ総合政党としては、自民党以外の政党はほぼ力を失ったといっても過言ではないと思う。しかし、例えば商業において、何でも売っている百貨店やスーパーに対し、特定の商品なりブランドなりに注力する専門店も共存しているし、政党が総合政党のみである必要はないはずである。

当面の政治状況としては、総合政党としての自民党と、経済や安保など、特定の政策分野に強い、ないしは特定の支持層の声を拾い上げる小政党が乱立し、それぞれの得意分野で自民党を補完し、あるいは自民党との取引を重ねて国政を動かしていく形になるのかもしれない。

その形をどう名付けるかはあるにせよ、政治改革が崩壊した今、政治状況を説明し、願わくは遠くにその理想を指し示す新たな枠組みやストーリーこそが、必要なのではなかろうか。

≪2022年参院選結果≫
https://www.jiji.com/jc/2022san?




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