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魚の臓物 [食べ物系]

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今年も秋刀魚は不漁らしい。

獲れないだけでなく、SNSとかニュースで写真を見るに、獲れた秋刀魚自体も、大そうやせ細っていてもはや痛々しい。サヨリかと見まごうほどだ。悲しみのあまり、かつて食ったまるまるした秋刀魚の塩焼きに思いを馳せる。身は言わずもがな、大根おろしをまぶしながら食う、はらわたの苦味とコクも良い。

そういえば、魚の臓物も、割と美味いものだ。

秋刀魚のはらわたもだが、同じように、鰯の丸干しのはらわたも、苦み走っていて素敵だ。同じ塩焼きのはらわたなら、鮎の素晴らしさときたら無い。秋刀魚や鰯のがワイルドな苦味とするならば、鮎は苔が主食のせいか、同じ苦味でも上品で清冽だ。塩焼きのはらわただけでなく、鮎の臓物を塩辛にしたうるかは、絶品である。焼いたものでは、鰻の肝焼きの香ばしさもまた捨て難い。

臓物なら、鰹の臓物の塩辛、酒盗は外せない。ちみちみとつまみながら日本酒でいくと、3~4合は飲めてしまう。クリームチーズと合わせるのも佳品だ。鮪の臓物で作った酒盗もありがたく、鰹のものと甲乙つけ難い。塩辛と言えば、やはりスルメイカが王道だろう。肝のしっかりしたコク、身の風味、香り。酒でも白飯でもいける万能選手である。魚ではないが、鮑の肝にも、得も言われぬコクと旨味がある。

肝のコクで言うなら、カワハギの肝醤油は至高かもしれない。カワハギの身のたおやかさと肝醤油のコクと力強さを合わせた無双感たるやである。

臓物系というと苦味やコクもあるが、歯ごたえが印象的なのもある。クエやアラの胃袋の湯引きなどは、魚の風味を残しつつ、コリコリとしていて楽しい。変わり種では、マンボウの腸の湯引きも、やはり風味と歯ごたえのバランスに妙がある。やはり魚ではないが、鯨、その小腸を塩ゆでした百ひろも、噛めば噛むほど滋味がある逸品だ。

以前、新宿の思い出横丁のトロ函で食べた鮪のもつ煮込みも美味かった。いわゆるもつ煮込みの味付けで鮪の臓物を煮てある代物。ふるふるした舌触り、歯ざわりや脂っぽさはいつものもつ煮なのだが、魚の脂だからかどこかあっさりしていて、どことなく品が良い。

魚の臓物は捨てられがちだが、獣肉の臓物がそうであるように、その種類や料理法によっては、かなりの美味になることもある。もしかしたら、人間だってそうかもしれない。今世の中や周囲から評価されていない人だって、例えばその魅力を理解する人がいて、巧いこと料理してやれば、極上の美味として力を発揮することもあるんではないか。

食の楽しさ、もっと大げさに言えば、人生の楽しさをちょい足しするためにも、魚の臓物の美味さも、無視しないようにしたいものである。



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