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新型コロナ報道における考え方の違い、東京新聞とブルームバーグ [その他]

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新型コロナウイルス対策の状況に関する各国比較に関し、時をほぼ同じくして東京新聞とブルームバーグがそれぞれ報じていた。その違いが興味深かったので、備忘録代わりに書いておきたいと思う。

まず、東京新聞はこちら。

◆日本のコロナ対策は「根性論」 海外在住ジャーナリストに聞く各国政府の採点は(東京新聞)◆
(2021年4月28日 12時00分)
https://www.tokyo-np.co.jp/amp/article/100974

記事の立て付けとしては、日本出身の海外在住ジャーナリスト6名に、居住国と日本のコロナ対策の比較についてコメントを求め、採点をさせたもの。見出しにもあるように、各ジャーナリスト、おおむね日本には厳しい採点である。

例えば、ベルギー在住の栗田路子氏の採点。日本と比べ人口は1割以下の約1150万人のベルギーにおいてコロナによる死者は2万4000人を超え、日本の2倍以上になっている点は認めつつ、ベルギーを80点、日本を10点以下と評している。

記事によれば、ベルギーについて、「「対策の過ちを認め、PCR検査や医療資源の確保を猛烈な勢いで実施した」として「80点」と採点。NZと同様、デクロー首相らが透明性を大切に、科学的かつ自分の言葉で説明しようとする姿勢にも高評価を与えた」とのことである。

他のジャーナリストも、政府の説明や情報提供のあり方を理由に、アメリカ在住者を除き、日本に低い採点をしている傾向がみられる。


一方で、ブルームバーグの記事は以下のとおり。

◆シンガポールが首位浮上-新型コロナ時代の安全な国ランキング(ブルームバーグ)◆
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-04-26/QS5FPMDWRGG001?cmpid%3D=socialflow-twitter-japan(2021年4月26日 18:08 JST)

こちらは、新型コロナウイルス感染症(COVID19)を巡り「COVIDレジリエンス(耐性)ランキング」として、各国の状況をランキング形式にしているもの。

記事に掲載された図表では、53か国まで上げている。見出しにあるように、今回のランキングではレジリエンスが高い(=安全)な国として、シンガポールが首位。以下、ニュージーランド、オーストラリア、イスラエル、台湾、韓国と続き、日本はその次の7位である。ちなみにドイツは26位、ベルギーは31位であった。

ランキングの指標として、
・人口10万人当たりの症例数
・過去一か月の死亡率
・100万人当たりの死亡者数
・検査陽性率
・ワクチンを接種した人の人口割合
の5つを用いており、これらから算出された耐性スコアでランク付けをしている。

この二つの記事を比べてまず思うのは、評価の基準である。東京新聞の記事がなんらかの数値基準というよりもジャーナリストの主観による定性的な評価であるのに対し、ブルームバーグの記事がある程度客観的な数字によって算出された定量的評価に基づくランキングであるということ。

例えば、東京新聞における栗田氏の採点では80点として高評価を受けていたベルギーのコロナ対策だが、その高評価のコロナ対策をもってしてもブルームバーグの今回のレジリエンス評価では31位であり、7位の日本はおろか、アメリカ(17位)よりも下であり、変異株が猛威をふるうインド(30位)すら下回っている。日本のコロナ対策のグダグダにはうんざりさせられるが、どちらが客観的に信用できるかというと、ブルームバーグのランキングに軍配を上げざるを得ない。

もちろん、各国のレジリエンスの順位が政府の対策の有効性そのものの順位ではないにしろ、政府の対策がめざましく奏功している国でレジリエンスが下がることは考えにくいし、その逆もまた然りではないかと思う。少なくとも関係が無いとは言えないだろう。

次に考えさせられるのが、それぞれの記事の意味である。報道記事も想定読者を意識しながら書いているに違いないからだ。

東京新聞の記事の特徴は、ジャーナリストの主観による定性的な評価で、総じて日本政府の対策に低い採点を付けていたことだろう。緊急事態宣言を巡るドタバタや、国民に自粛を強いつつ五輪開催には躍起になるように見える政府の姿勢には、確かにイライラさせられる。日本政府のコロナ対策が評価できないと思うのは当然だ。東京新聞は、そんな人々の感情に忖度したのではなかろうか。

一方で、今回のブルームバーグの記事はそんな日本国民の感情に忖度はしていない。指標となる数字の推移を記録し、それに基づいてランキングを出し、数字の推移の原因となった各国の対策を指摘しているに過ぎない。シンガポールなら、国境の管理と厳しい隔離プログラム、そしてワクチン接種である。政府のコロナ対策にイライラする日本人としては、53か国中7位は意外の高順位だが、数字がそう示しているのだから仕方ない。

東京新聞もブルームバーグも、どちらも虚偽を伝えているわけではない。かたやジャーナリストによるコメント、かたや定量的指標の計算結果であり、どちらもあくまで事実を伝えた報道である。しかし、その事実の切り取り方や読み手に与える印象には、大きな違いがあると言わざるを得ない。

報道を鵜呑みにしてはならないとはよく言われるが、日常生活にまぎれてついつい忘れがちである。同じような事情を報じたものを見比べることによって、つまり比較によることで、ようやく気付くこともあるんだなと今更ながら思った次第である。



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