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【フィクション】とある大統領選挙 [フィクション]

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今回の大統領選挙は、大激戦だ。

有権者の過半数の得票を得る候補が出ず、
決選投票は、すでに30回を重ねていた。

そして、31回目の決選投票が開票。
結果は・・・。

またしても、またしても、またしても、
過半数を制した候補はでなかった。

生ぬるい風が周囲の徒労感を否応にでも
高めていく。

「・・・ああ、もうこんなことヤメだヤメだ!」

A氏がB氏に向かって叫んだ。B氏応えて曰く、

「そんなこというなよ。社会には、指導者が必要だ。
 指導者を選ぶなら、民主制が良いっていったのは、
 おまえじゃないか・・・」

「そりゃそうだけど・・・あ、」

「どうした?お、」

何かを見つけたA氏とB氏は走りだし、
手を振りながら叫びだす。

「オーイ、オーイ、オーイ・・・」

彼らの視線、水平線の彼方には、大きな船の影。

「オーイ、オーイ、オーイ・・・」

着衣脱ぎ捨て頭上で振るう必死な二人の姿。

それらに気づく様子は無く、船は、沈む夕日を
浴びながら遠ざかる。

A氏がっくり膝を落とし、

「また、ダメか・・・」

B氏はA氏の方に手を置き、

「そう、気に病むな。そうさな、気晴らしに・・・」

B氏、やや口ごもりつつ、

「・・・大統領選挙でも、やるか・・・」

「・・・ああ」

A氏は、力なく頷いた。

「俺も、お前も、大統領候補じゃないか・・・」

こうして二人きりの島に、数える気もしない夜と、
32回目の決選投票がやってくる。



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