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あぶらぼうずの秋 [食べ物系]

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先日、ある居酒屋に入ると、あぶらぼうずがあった。
塩焼か、煮付け。

10年と少し前、とある事情で沼津に立ち寄った際の刺盛りの中に、やたら濃厚な脂の乗ってるであろう、白身の、一際印象的な刺身があった。そのとき二日酔いでこんがらがっていたに違いない体内に、その脂がふわりと染みた。

それが、あぶらぼうず。

あとでちょいと調べたら、ギンダラの仲間で、最長1.8メートルになる大きな魚。クエに偽装されることも多いそう。非常に脂肪分が多く、食べ過ぎると腹を下すと言われるキラーコンテンツらしい。でも旨かった印象は消えない。

メニューの6文字を見て、あの日の沼津の秋風を思い出す。

そんなわけで、篠田麻里子似の店員に、あぶらぼうずの塩焼を頼んだ。冷酒を嘗めながら待つことしばし。焼かれた魚肉片が現れる。

大根おろしとはじかみを添えられた大振りの切身からはじくじくと脂が滲み出し、汁気たっぷりを予感させる。後は、ほろりほどける身と汁気と脂を、記憶とともに酒で流し込むのみ。ほどよくこげた皮のねっちりした感触もよい。

塩焼を食い終わり、旨い魚を食った満足に浸っていると、過ぎた年月と失ったもののほろ苦さが体内を駆けた気がした。



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