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【読書】独裁者プーチン [読書]

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『独裁者プーチン』(名越健郎)読了。

プーチン大統領の評伝と近年のロシアの政治情勢の解説として、
とても愉快に読んだ。これまで、元KGBとか、とりあえず上半身脱ぐ
とかのマッチョイメージと、ソ連崩壊後のロシアの混乱をどうにか
収めたくらいのイメージしかなかったもんで。

ポイントとしては概ね以下のとおり。
 ・数時間にもわかるカンペ無しの質疑応答を続ける
  セレモニー「国民との対話」をはじめとする、精力的な執務姿勢
 ・軍隊および情報機関を重視し、フルシチョフやエリツィンではなくスターリンと
  ブレジネフを評価する力への信頼
 ・要人の暗殺や露骨な選挙干渉を辞さない民衆統制志向
 ・資源開発関連を除くインフラ整備等の経済政策への無理解

ソ連崩壊とエリツィン時代の混乱を曲がりなりにも統制し、不正が指摘
されたとはいえ選挙を実施し、パフォーマンスとは言え国民の声を聴こう
とするプーチンは、ロシア的な民主主義の過渡期を代表する治安官僚
政治家なのだと思う。

ただ、プーチンのマキャベリズムと国家主義は、信頼できる二国間関係
を未だ持つことができず、クリミア半島を巡る状況のような綱渡りの国際
関係を余儀なくされている。

また、軍事費の維持に伴う国内資源配分における民間部門のひっ迫は、
ただでさえ少ないロシアの国内インフラ投資を妨げ、経済成長のボトル
ネックになることは間違いないだろう。

さらに、ロシア宮廷政治の伝統ともいえるクローズドな人材活用は、
たとえプーチン自体が清廉であったとしても(いわゆるパナマ文書で
それも危ういが)、エリツィン時代のオリガルヒのような政権周辺の
政治腐敗への対応を、後手後手に回らせるに違いない。

結果、現在のプーチンは、国内で必ずしも支持されるわけではなくなっているようだ。
報じられている大規模な選挙干渉は、おそらく事実だろう。

インターネットの普及で、政権批判は拡散する。

対外関係の軋轢と国内経済への不満、政権批判を、民主主義的なスキームを残しつつ、
プーチンがどうさばくかは、見ものだと思う。

さて突飛なようだが、カリスマ性、曲がりなりにも民主制ロシアという
国の形を作った点と、政治的安定性を第一に考えた点という意味では、
プーチンはリー・クアン・ユーに近い指導者なのかもしれないとも感じた。

ただ、プーチンがリー・クアン・ユーになれなかったのは、絶望的に
広い国土と安保理の常任理事国という大国意識、その他地政学的
理由に加え、経済(ないしは経済行動を取る人間)に関する無理解、
無策が大きいのではないかとも思う。

リークアンユーが国民が儲けるための政治の安定を目指したのに対し、
プーチンは安定のための安定を模索した。その間隙を政治腐敗が蔓延り、
政権が批判され、批判への高圧的な対応がまた批判を呼ぶというスパイラル。

ソ連崩壊後のロシアは、未だ苦し気な寝返りをうっているのかもしれない。
まあ、日本も他国のことを言えた義理ではないのだが。

などととりとめのない雑感しきり。



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