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野党へのエール~政治改革を無にしないために~ [政治]

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立憲民主党をはじめとする反政権の野党は、政権獲得を目的とせず、国民の一部のファン層のガス抜き活動に精を出していた55年体制下の社会党にどんどん近づきつつあると思うし、それは90年代の政治改革(選挙制度改革および政治資金規正法改正)の成果を無にするものではないかと懸念している。

思えば、55年体制での社会党は、政権奪取を期待されなかった代わりに、いわゆる革新派インテリ層や、労組、その他非自民層の政治的代弁者としての地位を確保した。一方の自民党は、政権への野党からの挑戦が無い代わりとして、国対政治を通じた社会党とのコミュニケーションで野党の見せ場を確保して面子を立てるとともに、複数派閥相互の権力闘争である種の自浄作用を保っていた。

しかし自民党内の派閥抗争は、様々な不合理を露呈した。例えば、大平内閣時代の四十日抗争をはじめとした国民置き去りの不毛な消耗戦、派閥抗争での巨額資金の必要が生んだリクルート事件や佐川献金事件等の疑獄、政府与党の役職とは無関係に最大派閥(田中派、そして竹下派)が事実上総理総裁の生殺与奪の権利を持つ歪な権力構造等々。

そこで90年代初頭、自民党内の派閥抗争から政権交代可能な政党同士の政策論争をすべきということで、小選挙区制を軸にした選挙制度改革と、政党助成金制度など、派閥ではなく政党への政治資金の集中を企図する、いわゆる政治改革が実現することとなった。

政治改革は、自民党内の派閥抗争から政党同士の政権交代を志向するため、与野党ともに政権担当能力が問われることとなった。そして政治改革後、選挙での勝利による初の本格的な政権交代である2009年の民主党政権誕生は、政治改革の一つの成果となる、はずだった。

しかし、民主党政権は、既存官僚組織への不信感丸出しの姿勢、沖縄米軍基地問題をはじめとする安全保障問題、参院選での唐突な消費増税言及などの財政問題への軽率な対応、東日本大震災での不適切な対応、鳩山氏や小沢氏といった党内有力者の金銭スキャンダル、小沢一郎氏を巡る権力闘争、選挙公約に無い消費増税の決定などで自壊し、結果2012年に選挙で敗北した。

以後、自民党の安倍政権が続く中、旧民主党は離合集散を重ね、野党は支持率を上げられず、国政選挙では政権奪取に程遠い結果を出し続けている。そのためか、立憲民主党をはじめとする野党は、いわゆるおしどりマコ氏の候補者擁立などのように、既存支持者層の繋ぎとめに汲々としているように見える。

野党のその様子は、55年体制下の社会党に先祖がえりしているかのようで、それはそれで組織の生き残りとしては一つの手段なのかもしれない。ただ、すでに90年代の政治改革を経た現在は、55年体制とは大きく異なる。

それは、自民党内の自浄作用の喪失である。

小選挙区制をはじめ、政党執行部に資金や権限を集中させる制度では、かつての自民党の派閥のような党内の相互牽制は働かないし、相互牽制の不合理を否定したところに今がある。政権交代をちらつかせて与党を脅かせるのは、野党しかない。しかし、その野党がファン層の囲い込みに走って広く国民に訴えることを忘れているのが現状である。

率直に言って、これは90年代の政治改革の否定だ。

現状のまま、抑制の効かない与党を放置するのか。中選挙区制に戻し、政権を目指さない去勢された野党と仁義なき派閥抗争の与党という時代に戻るのか。政治改革が目指した与野党の政権交代を目指すのか。選択のカギは、野党にある。野党が心地よいファン層の声だけを聞く姿勢に埋没するか、与党の消極的支持層を果敢に引き剥がしにかかるか、いずれかであるはずだ。

今の安倍政権を積極的に支持している国民はそう多くは無いと思う。むしろ、野党との相対評価の問題であり、野党の主張によっては消極的支持層を与党から引き剥がすことは、不可能ではないはずだ。

野党の支持者や有力者の中には、90年代の政治改革で汗をかいた人も少なくないだろう。どうか、野党のイニシアティブで、政権交代可能な政党同士の議論で政治を活性化することを切に期待したいところである。



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