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『東京輪舞』刊行~歴史と組織に生きる個人のために~ [読書]

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月村了衛さんの最新作『東京輪舞』が刊行されました。

『機龍警察』、『黒警』、『影の中の影』、『ガンルージュ』などと同様、今回も性懲りも無く執筆協力をさせていただいています。週刊ポスト連載中も読んでいましたが、改めて読み直したので、雑感を綴ってみたいと思います。

この物語、ロッキード事件、東芝COCOM事件、ソ連崩壊、オウム事件、警察庁長官狙撃事件、北朝鮮問題など、日本の現代史を彩った様々な現実の事件が、若き日にわざわざ見舞いに訪れた田中角栄の声に感激した一人の公安警察官の視点から語られます。

その間、あるときは敵として、あるときは協力者として立ちあらわれる某国の女スパイに対する、国家に翻弄される者同士としての、敵視でも恋でも愛でも友情でもない、文字通り複雑としか言えない感情。

40年以上にわたる滔々たる歴史の流れに翻弄されながらも、主人公は、それらの事件に関与する経験を経て、国家や組織の非情さに打ちのめされ、仕事や私生活での挫折を重ね、信頼していた人の変質に失望し、成長しつつ、確実に老いていきます。

そして時は2018年。とっくに警察を退職し、古希を過ぎ、もはやないかつての田中角栄の時代に思いを馳せる主人公をつかの間癒す、輪舞。

そこには、世界の危機を救う正義の英雄もいなければ、世界を脅かす悪の魔王も存在しません。

改めて読み終えると、主人公の人生は、公安警察をテーマにしながら、歴史と組織の中で従いつつ抗いながらも日々生きている、等身大の人間の姿なのかもしれないと思い当たります。『東京輪舞』が胸を打つのは、絢爛な歴史的事実の背景に心躍らせることはもちろん、昭和と平成を生きてきた人間の普遍性に、どこか触れているからなのかもしれないと思うのです。

執筆協力をしている僕が感想を書くのは、あまりフェアではないと自覚していますが、どうかご容赦ください。

今回は、連載開始前の主要登場人物の時系列などの検討に加え、週刊誌での連載だったこともあり、毎週の原稿のやり取りや都度のアイデア検討にスピード感があり、文通のようでとても印象的でした。また、岡田成生さんの毎号のイラストも、とても迫力があって楽しみにしてました。

平成の終わりに、このような物語に協力できたことを嬉しく思います。どうか、手に取った方が心を震わす読書体験ができますように。

【特設サイト】(小学館)
https://www.shogakukan.co.jp/pr/rondo/

【amazon】
https://www.amazon.co.jp/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E8%BC%AA%E8%88%9E-%E6%9C%88%E6%9D%91-%E4%BA%86%E8%A1%9B/dp/4093801061


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