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読書寸評、2022年11月 [読書]

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■米山正信『化学ぎらいをなくす本』

兄と妹の対話編形式による化学入門の概説書。共有結合やイオン結合、酸化や還元、モルや気体など、化学の基本的な概念や考え方が平易な表現で書かれていて興味深かった。高校時代、化学を習って卒業したはずなのに、真っ新な知識に感じたのはご愛敬で、、、


■田中慎弥『切れた鎖』

表題作含め三作の短編集。ぬろりどろりとした言葉の使い方には、明晰さや快適さとかとはまた異なる得体の知れなさがあり、どことなく、生命のグロテスクさとそこへのおののきが感じられる。三作の中では、妻の妊娠から広がる妄想を描いた『不意の償い』が好きかも。


■宮内泰介・藤林泰『かつお節と日本人 』

日本と南洋を主な舞台に、鰹漁や鰹節の製造加工に携わる人々のネットワークとその歴史を、統計と個人史を交えつつ概説。鰹節の基本情報と、国内市場の変化、商品としてのダイナミズムが実に印象深い。ちょっとよい本枯節の出汁が飲みたくなった。


■角井亮一『すごい物流戦略』

物流、というか商品やサービスが顧客の手に渡るまでの流れを基点にした経営戦略論。アマゾン、ZARA、ニトリ、アイリスオーヤマ等の具体例と物流戦略の枠組み両方が示され面白かった。儲ける仕組みを作るには、戦略に加え大胆な投資が必須であることを再認識。


■吉田一郎『国マニア』

ちょっと変わった国や自治領などの地理、歴史がコンパクトに紹介され、平面上の線に過ぎないはずの国境にドラマを思わせる。日本人としては当たり前な国とその運営が、日本の外では必ずしもそうではないらしい。国の維持は人々の意思と努力の賜物なのだと感じた。


■北方謙三『三国志読本―北方三国志〈別巻〉』

北方三国志はかなり前に読んだけど、こちらは初めて。張飛とか呂布への思い入れや、日本の天皇観と中国の皇帝観の相違等を北方謙三自ら語るのがよい。正史準拠の情報が比較的コンパクトにまとめられているので、三国志入門としても面白いかも。


■村上龍『ラッフルズホテル』

演技する精神を地でいく女優が、かつて接した元戦場カメラマンの男を追いシンガポールへ赴く。金持ちによる切実な遊びの非現実感が、熱帯の熟れ腐る果実のような甘ったるい言葉でドロリ描かれ、どうにか現実に繋ぎ止められる。一切は存在していたのだろうか。



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