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警察庁のサイバー局新設と、サイバー対策の組織上の現状 [警察・刑事手続]

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■警察庁が来年4月に設置の構想 「サイバー局」「サイバー直轄隊」とは
https://news.yahoo.co.jp/articles/fc9c406f2d7ba9df5c82d1f85f5beb339d0b158a

報道によれば、警察庁が新たにサイバー局(仮称)を設けるべく、22年4月に警察法をはじめとした関連法令の改正を目指しているとのこと。警察庁における局の新設は1994年の生活安全局にさかのぼり、約30年ぶりとなる。

そこで、現状のサイバー事犯(サイバー犯罪やサイバー攻撃を含む意味。以下同じ)対策が警察庁においてどのように所管されているのか、ざっと概観しておこう。サイバー事犯を担当する局とその役割分担は以下の通り。

・生活安全局:サイバー犯罪対策
・警備局:サイバーテロ、サイバー攻撃対策
・情報通信局:サイバーフォース(技術支援)

現在の警察の運用では、「サイバー犯罪」と「サイバーテロ、サイバー攻撃」とが区別されているのが大きな特徴である。それぞれの意味を見ていこう。

■サイバー犯罪
・高度情報通信ネットワークを利用した犯罪やコンピュータ又は電磁的記録を対象とした犯罪等の情報技術を利用した犯罪

(参考)平成23年警察白書
https://www.npa.go.jp/hakusyo/h23/honbun/html/1-toku2_1_1.html

これだけだとわかりにくいが、警察白書でサイバー犯罪として紹介されている事例は、不正アクセス禁止法違反や、インターネットバンキングにおける不正事犯、出会い系サイトやアダルトサイト等の違法有害情報などである。特別法である不正アクセス禁止法をはじめ、インターネット等を利用した何らかの犯罪と考えてもよいだろう。では、サイバーテロ、サイバー攻撃はどうだろうか。

■サイバーテロ、サイバー攻撃
・サイバーテロ:重要インフラの基幹システムを機能不全に陥れ、社会の機能を麻痺させる行為
・サイバーインテリジェンス:情報通信技術を用いた諜報活動
・サイバー攻撃:サイバーテロとサイバーインテリジェンスなどの行為を含むもの

(参考)警察庁Webサイト
https://www.npa.go.jp/bureau/security/cyber/index.html

サイバー犯罪と異なり、サイバー空間で行われる刑罰法令上の違法行為一般を指すのではなく、「重要インフラ」に絞られているなど、より狭い概念である一方、「諜報活動」のように刑罰法令上違法かどうか微妙なものも含まれる。

このように、現状では、サイバー犯罪が生活安全局、サイバー攻撃が警備局、そしてそれらを技術面から支援するサイバーフォースを情報通信局が担当するというすみわけがされている。もちろん、何らかの事案があれば各局共同で対処することになるしその枠組みもあるが、局をまたいだ調整が必要とされることに変わりはない。

さて、サイバー局の新設はこの状況をどう変えるのか。

サイバー局の概要については、記事にあるように、大きく二つ。
(1)現在、生活安全局と警備局と情報通信局でそれぞれもっているサイバー事犯対策を統合する
(2)警察庁の機関である関東管区警察局に捜査等を担当する「サイバー直轄隊」を設置する

(1)については、現状でも調整や共同の仕組みはある程度存在するはずだが、これを統合し一元化することの大きなメリットとして、海外の捜査機関や情報機関との共同がしやすくなるということが第一ではないかと思う。もちろん、局をまたぐよりも、同じ局内での方が調整がしやすくなることは言うまでもない。

(2)について、関東管区警察局とは言え、都道府県警察を超えて警察庁が独自に捜査権限を持つことになる。かつて組織犯罪対策等様々な場面で「日本版FBI」を創設すべしとの意見が現れては消えていったが、図らずもサイバー犯罪対策でその一部が実現することになるのは、なにやら隔世の感がある。

約30年前、かつて生活安全局新設の背景にあったのが、平成以降の犯罪の増加傾向であった。特に、窃盗や街頭犯罪に対し、検挙だけでなく抑止を強化する考え方に立ち、犯罪の発生しやすい環境へのプロアクティブな対処を可能とする制度と体制づくりを目指したものである。

今回のサイバー局新設が、どのような犯罪および治安情勢に対応するためのものなのか。改正法案が国会に上程されれば、警察庁はその説明をしていかざるを得ないだろうし、報道はじめ、様々な論評もされることになるだろう。サイバー事犯について、自分はじめ人々の認識を新たにするよい機会だと思う。

犯罪が抑止されること、犯罪が発生してもそれが検挙され犯人が刑事責任を負わされると信じられること。そういった生活環境は、生活コストの上でも、社会的なコストの上でも、とても重要なものであり、社会のインフラと言っても過言ではない。今回のサイバー局の新設が、犯罪対策として、社会インフラの維持向上の一環として、効果を発揮することを祈りたいものである。



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