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筋子慕情 [食べ物系]

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たおやかないくらのつぶ感もよいが、酒肴には、
塩のガンぎまった筋子がよい。

箸でひとつまみ、口に放れば、目が覚めるようなしょっぱさに、
滑らかな皮の感触。

粒の微かな抵抗を噛み締めれば、じんわりととろけ、溢れ、広がる旨味、
そして塩味。

いくらもそうだが、筋子の旨味も、親魚の旨味と香りをしかと伝えつつ、
それを濃縮したような、贅沢な存在。

塩味と旨味の余韻が残る口の中を酒で洗えば、塩で引き締められた粘膜がやわらぎ、
筋子の旨味が溶け、酒は文字通り甘露に変わる。

確かに筋子でさけを飲んでいるはずなのに、筋子の美味さだけではない、
酒の美味さだけではない、何かしら別の体験へと進化する。

しょっぱさともったいなさが競い合い、おずおずと、
十分な間をあけて、箸をつけ、ついばみ、口に放り、噛み締め、酒を飲む。

惜しむらくは、肴の量に比べ、ついつい酒の量が過ぎること。

でもまあ、毎日筋子で飲むわけではなし、たまにはそんなことをしても、
バチは当たらんだろうとたかをくくる。

たちまちに
四合瓶の酒失せて
小鉢の底の
筋子ひとかけ



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