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【フィクション】犬のお散歩 [フィクション]

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僕の名前はコロ。ここのお家で飼われている犬だよ。

いつもは、「おばあちゃん」が散歩に連れていってくれるんだけど、
ここしばらく、お散歩は無しで、ちょっぴり退屈・・・

そんなある日、「お父さん」が散歩に連れ出してくれた!

僕は嬉しくて、ついつい走り出しそうとしたら、
リードを引っ張られて止められちゃった。

うっかり!

それから、「お父さん」や「お母さん」が、
毎日散歩に連れていってくれるようになったんだ。

「おばあちゃん」の姿をしばらく見ないのが、少し残念。
あんなに可愛がってくれるのに。どうしたのかな。

でも、僕はお散歩が大好きだから、

「コロ、行くよ」

なんて言われると、もう身体がうずうずしちゃう。

お散歩から帰ると、お腹はペコペコさ。

「おばあちゃん」がいないときは、「お母さん」か「お父さん」が、
ご飯をくれるんだよ。

いつもはコリコリしたドッグフードなんだけど、
最近は結構贅沢で、なんと、毎日骨付き肉!

骨は少し固いけれど、僕の歯ならへっちゃら。
バリバリ食べちゃうモンね。

でも、お腹いっぱいになったら、思うんだ。

それにしても、「おばあちゃん」どこにいったのかなあ・・・
また帰ってきて、一緒にお散歩いってくれないかなあ・・・

ってね。

家の中を見ると、「お父さん」と「お母さん」が何か話している。
僕はまんぷくになって、眠く、なってきた・・ぞ・・・

ふわぁぁぁぁぁ・・・・


・・
・・・
・・・・
・・・・・
・・・・・・

部屋の中、還暦を過ぎたと思しき男女の会話。

「・・・今更かもしれないけど、」

「なんだ?」

「あなたの親孝行ぶり、本当に、尊敬するわ。。。」

「それ以上言うな。。。」

男は頭を抱えうずくまりながらうめく。

「葬式を上げる金なんて、どこにあるんだ?俺だって、、、」

「そりゃそうだけど、よりによってさぁ・・・」

「ああするのがベストだっていうのは、お前のアイデアじゃないか」

女は、どこか虚空を見るともなく見てつぶやく。

「まあね、『おばあちゃん』も本望でしょ」

「そうだな。あんなに可愛がっていた、コロと一緒に、
 生きられるんだからな、たぶん。そうそう、」

「何?」

「後は、刃物の処分だ。そっちはお前に任せるぞ」

「・・・ええ、分かったわ。ところで、」

「ん、なんだ?」

「この分だと明日には、『おばあちゃん』も、完全に
無くなってしまうでしょうね・・・」

「ああ、よく平らげたものだ。コロも、な・・・」

リビングルームには、地の底に沈んでいくかのような、
乾いた男女の声。



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