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氷頭なます [食べ物系]

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好物というほどでも無いが、あればあったで、
つい食べたくなるものはいろいろとある。

例えば、氷頭なますなんかがそう。

鮭の頭の軟骨を薄切りにして、酢で和えて味をつけたもの。

初めて食べたのはいつか、記憶の彼方ではあるが、二十歳はゆうに越えていただろう。
コリコリした歯触りを楽しめば、確かに感じる鮭の風味があえやかで、あくまで涼やか
な酢の流れで洗われる。

きりりとした、清水のような酒に合わせるのがよい。

氷頭なますの風味は、センチメンタルな気分のとき、どこか、失われた若さのような
切なさすら感じてしまう。

あるときは居酒屋で、あるときは割烹料理屋で、あるときは蕎麦屋で、
氷頭なますをついばんできた。

決してメインにはなり得ないし、いぶし銀というには爽やかに過ぎるその存在は、
舌と胃袋に確かな足跡を残しているに違いないのである。

ある春の日になぜだかふと思い出した氷頭なます。
今度はどこで食らうことになるのだろうか。

また、忘れた頃にでも。



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