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【フィクション】愛欲+1 [フィクション]

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性交の後のけだるさは、なんて例えればいいのだろう。

わたしの背後で、精を放った彼が、
とても激しかった息づかいを整えているみたい。
それとなく、彼の方を向いて、
こうなるいきさつを思い出してみる。

わたしと彼が奇妙な同棲生活を始めてから、
いったい、どのくらいの時が経ったのか。
ありていに言えば、二人とも、ある日突然拉致され、
狭い空間に幽閉されたのだ。

なぜかは、わからない。

最初は、必死に逃げようともしたが、
わたしたちはあまりにも無力だった。
食事を与えられなかったこともあって、
日を追うにつれ、わたしと彼の衰弱は進んできた。

そして二人はだんだん、無気力になった。
だけど。

動物としての本能なのだろうか。衰弱したときに限って、
子孫を残したいという衝動がこみ上げてきた。
彼は、もともとわたしのタイプではなかったが、

(やりたい、かも)

ふと彼を見れば、
彼も、目をぎらつかせながらわたしを見ている。
彼の目には、わたしは一匹の雌。
わたしの目には、彼は一匹の雄。
もう、わたしたちを止めるものはなかった。

こうして性交を終えたわたしたちは、
とてもとても疲れていた。
そして食事を摂っていないことを思い出し、
猛烈にお腹が空いているのを感じた。

彼の方を見ると、わたしに背中を向けて、息を整えている。
とても無防備に見えた。

(あっ!)

わたしの両手は、わたしの意思とは無関係に、
彼の首へと伸びた。力の限り、わたしは絞めた。

彼は少しだけもがいていたが、しばらく締め続けると、
やがて力を失った。死んだのか、気を失ったのか。
もう、どちらでもいい。

わたしは彼の首筋をなめ回すと、
歯を立てて、一気に食いちぎった。
一片の、肉の味。

(美味しい・・・・・・・)

わたしは、自分を抑えることが出来なくなっていた。
首、手、足、胸、腹・・・・・・・。
彼を食いちぎり、食いちぎり、解体する。

さっきまで彼の形をしていたものは、
少しずつ、バラバラの肉塊に姿を変えていく。

わたしは、胎内に新しい命を感じながら、
たった一人のこの宴を心ゆくまで堪能していた。



男の子は先ほどから、
飼育ケースの中の情景に目を奪われていた。

「交尾の後、雌が雄を食べるって本当だったんだ・・・」

飼育ケースの中では、
雌カマキリが静かに口を動かしつつ、着実に、
雄カマキリを平らげていった。



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Christopher

Mol Sharma thanks
by Christopher (2021-06-01 11:50) 

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