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死神さんこんにちは [フィクション]

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ある、会社をさぼった日。

狭い部屋の湿った平たい布団でくの字になって不貞寝していると、
死神がいた。初対面だったが、昔絵物語で見たとおりだ。

聞いてみると、魂のノルマが集まらなくて、なかなか大変らしい。
ちょっと休憩しているとのこと。

まだ死ぬには早いとも思ったが、地獄に連れてってもらうのも一興だ。
痛かろうが苦しかろうが、無聊は紛れる。

で、死神に頼んでみた。

「俺を地獄に連れて行ってくれないか?」

「地獄は悪人の行くところだが、お前にその資格があるかな?」

「極悪人というほどではないが、悪人くらいなら、大丈夫じゃないか?」

「わかった。調べてみよう・・・」

空中に大きなモニターが現れ、俺の生涯が流れる。

幼稚園のころの兄弟へのささやかなウソ、親をだましてくすねた小遣い、
友人への裏切り、恋人への不実・・・。

他人のささやかな愛情と犠牲を踏み台にして生きてきた姿。

確かに、犯罪や大きな悪には手を染めてこなかったのだろうが、
これはこれでなかなかに楽しい。自分であるという一点を除けば。

モニターの中の自分が大人になり、そして現在のものとなった。
終わったらしい。

「どうだね?資格はありそうかい?」

「まあ、大物ではないが、十分だ。ありがたい。では・・・」

死神が大仰なしぐさを取り始める。魂を抜きにかかったのか。
しばらくそのしぐさが続くが、どうも様子がおかしい。

「どうした?死神」

「だめだ。うまくいかない・・・」

死神は空中からタブレット端末のようなものを取り出し、
なにやら検索を始める。そして、

「ああ、お前はだめだ・・・。ちくしょう・・・」

「なぜ?」

「当局によれば、うだつのあがらないこの生そのものが、
 お前の『地獄』だとさ・・・」

Deathofgod20070103.png



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