SSブログ

とある作家の良心~月村さんの場合~ [その他]

スポンサーリンク




先日、ハヤカワミステリマガジンに連載中の小説、『機龍警察~狼眼殺手』についての打ち合わせに参加しました。メンバーは、作者の月村了衛さん、私、そして科学考証の谷崎あきらさんと、早川書房の担当編集者の方4人。

ネタバレになるので内容はお知らせできませんが、打ち合わせの雰囲気だけでもと思い、ちょっと書いてみます。
打ち合わせでは、連載開始前に共有していたプロットに沿って、主に月村さんが発した問題意識に従い、小説として具体化していくのに必要な事実や理由づけを一つ一つ詰めていきます。いつ、だれが、どこで、何のためにどのような行動を取るのか。時間と場所は整合性が取れるのか。法制度としてそのような行動はあり得るのか。

各自、自分の持てる専門知識をはじめ、これまでの人生で得た知識を総動員させ、いかに自然にして魅力的な物語になるか、脳髄を絞り上げて発言します。ストーリーテラーの目線で発言と事実を吟味し、発言し、必要な情報を引き出す月村さんの技が光るところです。

ちなみに打ち合わせ時に月村さんが持参するのは、なぜか「魁!男塾」のノート。ちらり横目で見ると、『黒警』など、過去の作品の打ち合わせメモなどがあり、ふと懐かしくなります。

ときには誰かの発言が真っ向から否定されたり、ときには誰かの発言から思わぬ良い方向へのアイデアが芽生えたり、ときには閑話休題で面白い脱線を突っ走ったり。当事者視点から離れてみれば、その様子は、プラトンの対話篇のようにすら感じられる、濃密かつ知的な、それでいてどこか楽しい時間と言えるのかもしれません。

これまでは、月村さんと一対一で打ち合わせをすることが多く、四人での打ち合わせは今回初めてでしたが、都内喫茶店にて四時間半あまり、文字通り白熱した議論に。打ち合わせを終えた早川書房の担当編集の方が、「こんなところまで詰めるとは思いませんでした。。。」と思わず漏らしておられたのが印象的でした。

『機龍警察』シリーズ、『黒警』、『影の中の影』、『ガンルージュ』でそれぞれ打ち合わせを含む執筆協力をしてきて、プロの作家としてその時点でできる限りの情報を調べ尽くし、読者を甘く見ない、作品に対する真摯な姿勢にはいつも頭が下がります。

もちろん、月村さんの作品が完璧である、史上最高だ、などと言うつもりはありません。好き嫌いもあるでしょう。しかし、その真摯な姿勢が続く限りは、紆余曲折を経たとしても、作品が進化をし続けていくことは間違いないと思います。

執筆協力者のはしくれとしてはもちろん、一人の読書人として、月村さんの作品に注目していきたいと思います。



スポンサーリンク



nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

トラックバックの受付は締め切りました