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【フィクション】孤独、繁栄、そして死 [フィクション]

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僕は、一個の細胞だった。

ほんの少し、周りとうまくやっていくことができなかった。
疎外された僕は丁重に無視され、誰の役にも、何の役にも立てずにいた。

僕は何故こうなのだろう?
何故、僕は生まれてきたのだろう?

ただひたすらに、自分を責め続けた時間。
それは永続する業火のよう。

募る思いで自分を燃やし尽くしそうになったとき、
目の前に、もう一人の「僕」がいた。

僕は、あのときの嬉しさを忘れられずにいる。

もう一人の「僕」も、似た寂しさを感じたのだろう。
高ぶる感情が臨界に達するたびに、「僕」は増え続けた。

増え続ける「僕」たちは、明らかに周りへの脅威となった。
寂しさの全てを結集させ、「僕」たちは戦った。

様々な兵器で「僕」たちは殺されていったが、
その憎悪が、ますます「僕」たちを勇気付けた。

そして、ある日。

「僕」たちを迫害した者たちを、征服しつくしたのだ。

だが、最後の者が息を引きとると同時に、「僕」たちも、
ひとつ、またひとつ、命を失っていく。

どうしたのだろう。

急速に失われていく「僕」たち。

波のように押し寄せる死が、もう、僕の足元まで来ている。
何故、僕は生まれてきたのだろう?

考える僕に、死は優しく口づけを迫る。

癌。


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