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ラジコンカー [フィクション]

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男の子は、ラジコンカーが欲しかった。

クラスの男の子の話題は、ラジコンカーで持ちきり。
一人、また一人、ラジコンカーを買ってもらっていた。
ただ、ラジコンカーは、子供のおもちゃとしては、
とても高価だった。

男の子は粘り強く両親にねだった。

両親に話をするとき、それが何の関係のない話でも、
最後にラジコンカーの話をするのを忘れなかった。
雑誌のラジコンカーの広告を、
両親の目につくところにわざと置いた。
トイレには、欲しいラジコンカーの写真を、
ぺたぺた貼り付けていた。
などなど。
陳情工作の執拗さに、両親は辟易するほど。

両親はついに折れた。

だがラジコンカーはとても高価だった。
そこで両親は、ラジコンカーを買うに当たり、
一つ条件をつけた。

『ラジコンの組み立てはお父さんのいるときに限る』

男の子が組み立てに失敗しては大変と思ったのだ。

ただ父親は忙しかった。
男の子が寝てから帰ってくることもしばしば。
休みもほとんど取れなかった。
だから、ラジコンカーの組み立ては遅遅として進まなかった。

あるとき、一人でこっそり、少しだけ組み立ててみた。
そのことがばれたとき、両親にこっぴどく叱られてしまった。
それ以来男の子は、とてもとても歯がゆい思いをしたが、
条件を守って堪えた。

それでも、三ヶ月ほどして、ラジコンカーは完成した。

友達と一緒に走らせたときの爽快感といったら。
男の子はそれまでの鬱憤を晴らすかのように、
毎日ラジコンカーを走らせて遊んだ。

ところがあるとき、ラジコンカーが動かなくなってしまった。
男の子はバッテリーかと思ったが、充電しても動かない。
どうも、中の機械の様子がおかしいらしい。

分解するには、父親に見てもらわなければならなかった。
ところが、父親は仕事が忙しく、頼んでも頼んでも、
なかなか見てもらえない。
そのため、ラジコンカーで遊ぼうと友達に誘われても、
男の子は断るしかなかった。

父親はなかなか時間を割いてくれなかった。

『仕事で疲れているのに、なんで子供のおもちゃを見てやらなければならないのだ』

父親の正直な思い。
母親も、そんな父親を慮り、
ラジコンカーの修理を無理強いすることはできなかった。

いつしか、子供達の間で、別のおもちゃが流行るようになり、
ラジコンカーで遊ぶ子供は少なくなっていった。
男の子が父親に修理を頼む回数も、だんだんと減っていった。

そして、
ラジコンカーは、埃をかぶったまま、棚の中で眠っている。

両親は男の子の飽きっぽさにあきれてしまっていた。

男の子は、ラジコンカーを見るたびに、
なぜか、
両親に対し、
恨みに似た気持ちを抱くのを押さえられなかった。



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