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ヒロイックとは。エレコーゼ雑読 [読書]

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先日、久々にマイケル・ムアコックをたしなもうと思い立つ。

で、エレコーゼサーガの『永遠のチャンピオン』と『黒曜石の中の不死鳥』をざざっと読み終えた。

エルリック、コルム、ホークムーンは小中学生のうちに手を出していたが、実のところエレコーゼは初体験。もちろん、ハヤカワの文庫旧版である。

やはり、ムアコックの世界と天野喜孝の表紙の相性の良さは異常と確認。エルリック『黒き剣の呪い』の表紙がベストではあるものの、エレコーゼも悪くない。外人のイラストレーターの描いたエルリックのあまりのアレさには愕然としたし。

閑話休題。

エレコーゼサーガは、20世紀のアメリカに生きる男が、突然異世界に呼び出され、なんか無理やり英雄扱いされて、剣を持たされて戦いに駆り出される話。

自分の望む生活から引き剥がされ、ひたすら転生し、自分でも分らぬ間に世界のキーマンになり、自分の意志か「法」「混沌」「天秤」の意志か渾然としたままに世界に対する役割が果たされ、また転生を余儀なくされる。

まるで、その存在自体が「世界」に対する触媒のようなもの。

自分を超えた存在たちに翻弄されつつ、世界の何をも信じられず、どうにか世界に意志を突き立てようとするエレコーゼは、確かに英雄だ。このような、決定された運命ではなく、神の試練でもなく、個人の意志でも無いような物語がイギリスで生まれたのは、少し不思議である。

そういえば、物語にただただ英雄的なものを感じたのは、ずいぶんと久しぶりのような気がする。

人が物語を求めるのにはいろいろな理由があろうが、大なり小なり、大きな流れに棹差す個人の力や生き方を見たいのではなかろうか。

その意味では、ヒロイックファンタジーというのは、物語の原型というか、物語というものの魅力の精髄なのかもしれない。

言葉の美しさ巧みさも、登場人物の精緻な心理描写も楽しいし、時代風俗もよかろう。しかし、それだけではない、物語自体の骨太の魅力も、大事にしたいものだ。

などと久方ぶりのムアコックで感じた次第なんである。



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