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トランプ氏が次期大統領に!アメリカ大統領選雑感~分断と再統合~ [国際]

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日本時間の11月9日に大勢が判明したアメリカの大統領選挙。クリントン氏が優位だった下馬評を覆し、トランプ氏が次期大統領の座を射止めました。

選挙の結果自体はそれなりの盛り上がりを見せましたが、選挙戦や候補者同士の論争自体は、必ずしも活発だったとは言い難い印象です。具体的な政策論争とは思えないエキセントリックな発言と、健康問題、年齢、個人スキャンダルに終始し、曲がりなりにも国際社会で最大のプレーヤーである米国の最高権力者の選挙としては、魅力を欠くものに映りました。

アメリカ国民としても、良い人を選ぶのではなく、どちらがよりマシか、という視点での選択だったと思います。

その大きな理由としては、やはり候補者が魅力を欠いた点にあると言えるでしょう。ホワイトハウスの中枢を良く知る、経験豊富なプロであるクリントン氏は、すでに有権者から飽きられ、加えてスキャンダルを抱えました。エキセントリックな発言で注目を集めた素人トランプ氏は、選挙戦における議論の中で発言の度重なる軌道修正を余儀なくされ、その年齢もあいまって、新鮮さを失っていきました。

今回、なぜアメリカは魅力的なリーダー候補を出すことができなかったのか。個人的な仮説としては、リーダーの支持層が、国全体の代表を生み出す母体として弱体化したからではないかと考えています。

双方の主な支持層を考えると、クリントン氏はマクロの外交や経済に関して洞察と経験を持つないしは持とうとする政治的(≒経済的)エスタブリッシュメント層、トランプ氏は身近な生活問題をはじめとしてミクロから発想する生活者層であると言われています。これは、従来のリベラルや保守とは微妙に食い違う軸でしょう。

まず、エスタブリッシュメント層にとって、経済のグローバル化や地球全体でのアメリカの果たす役割についてあまりにも自明であるからか、その重要性を生活者層に訴え、理解させることを怠ってきたのではないかと思います。同時に、エスタブリッシュメント層が経済のグローバル化で得た利益は、グローバル化に危惧をいだく生活者層を含め、国内に広く分配されてきたとは言えないと思います。

いわば、有権者の多数を占めるはずの生活者層に対する、説得と分配を怠ってきたのではないかと考えられます。それは、エスタブリッシュメントによるノブレス・オブリージュの放棄とも言える事態とも言えるのではないでしょうか。

ヒラリー氏は、そのスキャンダルもあり、このような堕ちたエスタブリッシュメントの代表選手になってしまったという印象です。

一方の生活者層はどうでしょう。外国人労働者の流入や、格差の拡大、グローバル化に伴う生産物の価格下落の懸念など、日々の生活不安を背景にした政治的主張は確かに強い説得力を持ちます。しかも生活者は政治的には多数派です。

ただ、メキシコ国境に壁を作り、しかもそれをメキシコ政府に負担させる、というような荒唐無稽な主張が国際政治的にとおらないことは、真っ当な大人が考えればすぐにわかるはずです。生活者層の具体的な悩みを国内外の政治でどのように解決すべきか、これまでエスタブリッシュメント層に任せてきたその悩みに、おそらく生活者層は初めて直面したのではないかと想像します。

トランプ氏は、自身の生活が国内外の政治の網の目にあることをようやく自覚しつつその解決方法が分からない生活者の叫びを、駄々っ子のように代弁しているだけと言えるのかもしれません。

つまり堕ちたエスタブリッシュメントであるヒラリー氏には知恵や経験はあるが国民の生活が無く、駄々っ子であるトランプには生活や要望はあるが、知恵や経験が欠けていると考えられます。

このような、ある意味魅力を欠く候補者がそろった背景には、アメリカ国内の人々の深刻な分断があり、それぞれの相互理解が損なわれていることにあるのではないかと思います。エスタブリッシュメント層は生活者層の頑迷を批判し、生活者層はエスタブリッシュメント層のエゴイズムを批判します。批判は反論を呼び、激しい議論に疲れた双方は、さらに身内の快適な言論に閉じこもることになると想像されます。

トランプ次期大統領の最初の課題は、国民の統合を演出することでしょう。エスタブリッシュメント層と生活者層の分断を埋め、双方をつなぐメッセージをトランプ氏がどう訴えるのか。注目を引く言葉を使うことには長けているトランプ氏の言動に注目したいと思います。



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