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英EU離脱に関するよしなしごと。グローバリゼーションとナショナリズム [国際]

国民投票により、イギリスのEU離脱が現実化してから2年半。
英国内でも協定案が採決できていないことから、いろいろと悩ましい状況にあるに違いない。

背景には様々な事情が指摘されているが、例えば移民や難民への対応のように、
EUによる人・モノ・カネの緩和規制に対し、自分達イギリス人の利害が損なわれている
と感じた低所得者を中心とする人々がNOを表明した、というあたりが最大公約数なんだ
と思う。

縮めれば、グローバル化や自由経済への反対と、国家主権の復権と言えるだろうか。

確かに、EUから離脱をすれば、出入国や貿易などのルールについてEUの制限を受ける
ことなく、イギリス独自で決めることが出来る。おそらくそれは、EUのルールよりもイギリス
の国情を反映したより強い規制になるだろう。

ただ、一般的に、いわゆるグローバル化(ここでは、国境を越えたルールの共有化、くらいの
意味で使う)による貿易の方が国内の経済活性化につながるし、ルールがガラパゴス化した
不便な国からは資本が逃げることになりかねない。

したがって、EU離脱はイギリス経済のパイ全体を拡大にはならず、高額所得者は規制が
強化される前にイギリスを脱出し、もしくは資産を流出させるだろう。外国資本も慎重になら
ざるを得ない。

結果、イギリス国民全体が貧しくなる方向には向かうと思う。僕ですらイメージできるん
だから、イギリス人だってわかっているはずだ。

それでもなお、イギリスはEU離脱を選んだ。

イギリス人の愚かさを嘆くのは簡単である。もう少し掘り下げると、残留賛成派が残留の
メリットとコスト配分を広く説得できなかったこと、さらに根源にあるのは、経済合理性を
超えて、「自分達のことは自分達で決めたい」という、自律への渇望があったのだと思う。

前者について言えば、相対的に高所得者が多いとされる残留派がメリットを主張しても、
それを享受するのは高所得者だけではないかという懸念が払拭されずにいた気がする。

例えば、移民による治安悪化のリスクを負うのは低所得者であり、高所得者は自費で
セキュリティをまかなえば足りる。しかも多くの高所得者は、いざとなれば海外で働き
暮らすことだってできるだろう。

後者は、民主主義の使い方の難しさではないかと思う。

民主主義の基本の一つは、「自分達のことは自分達で決める」ということにある。
そこにあるのは、投票権を持つ「自分達」と投票権を持たない「他者」である。

しかし、EUという仕組みの中では、例えイギリス国内のことであっても、EUで決めたルール
が優先される。すなわち、自分達では無い他者によって物事が決められてしまうという違和感
は、どうしても拭えない。その思いをEUの制度内でうまく掬い取ることが出来なかったのだと
思う。

しかし一方、EU離脱は、イギリスにとって「自分達」のことかもしれないが、ステークホルダー
はイギリスを超えて拡散している。結局、利害関係のある「自分達」とそうでない「他者」を
分けるのが原則の民主主義を一つの国内でそのまま使うには、あまりにも問題は複雑だ。

その意味では、国民投票というやり方を選んだのはやや稚拙だったのかもしれない。

もし国民投票という手段を使うのであれば、イギリス国内に限定される再分配政策や、
移民・難民への費用の分担に関する意思決定について、使うべきだったのではないだろうか。

経済全体のパイを増やすこと、所得分配やリスクの負担を公正にすること、境界を越えた問題に
対する一国内の民主主義の限界など、イギリスのEU離脱はいろいろなことを考えさせてくれる。

グローバリゼーションとナショナリズム、どの程度、どのように折り合いをつけるべきか。

答えは風の中。

【参考記事】
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181211-00050002-yom-int
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安田純平氏の解放に関する安堵とエトセトラ [国際]

シリアで武装勢力に拘束されたジャーナリストの安田純平氏が3年4ヶ月ぶりに解放されました。

これについては、政府の警告を無視して危険地域に行って拘束されたのだから自己責任であると批判する意見もある一方、危険地帯に趣くジャーナリストがいてこそ世界の状況が可視化されるとして評価する意見もあります。

個人的には、まずは、安田氏の命が助かったことを安堵するとともに、その解放に尽力した国内外の関係機関に敬意を表したいと思います。その上で、ジャーナリズムの役割と、個々のジャーナリストの評価は分けてもよいのではないかと考えます。

確かに、危険地帯も含めて取材に趣き、世界の具体的な情報を伝えるジャーナリズムの役割が大切なのは、一般論として言うまでもありません。一方で、安田氏個人の場合、過去にも拘束された経験があることなどから、今回の取材にあたっての準備や安全対策が、ジャーナリストの平均的な水準と比べて疎かだったのではないかという懸念が残ります。

身柄の解放には、身代金が支払われた可能性が高く、それは武装勢力の資金源となってしまいます。また、政府は国民を守る義務があることから、身柄解放のために関係機関は多くのリソースを割かれることになります。その意味では、ジャーナリスト個人の命のためはもちろん、様々な理由で、安全対策は重要です。

安田氏におかれては、まずは心身を休めていただくことが前提ですが、ジャーナリストとして、今回の取材の経緯やその結果を公にし、今後の安全対策への参考となる情報やシリアの現状について、人々にきちんと伝える役割を果たしていただくことを期待します。

【参考記事】
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181027-00000073-mai-soci
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雑感、南北首脳会談 [国際]

韓国と北朝鮮の南北首脳会談と、その結果である板門店宣言が大きく報じられています。南北首脳会談や朝鮮半島の和平、非核化に向けたプロセスに日本が主導権を発揮できなかったことや、拉致問題の解決への進展が未知数であることなど、日本にとっての課題は無いわけではありません。

ただ、朝鮮半島の非核化に向けた動き自体は、日本の安全保障にとっても間違いなくプラスです。その意味では、今回の会談には一定の評価はできるとともに、今後予想される米朝首脳会談では、非核化の具体的な方法論やロードマップの議論になることでしょう。

米中露の狭間で独自の外交を目指す北朝鮮にとって、アメリカとの直接対話と、アメリカによる体制保障は、いわば国家目標だったと思います。米朝首脳会談は、その実現のための大きな一歩であることは間違いありません。
今回の会談で報じられた金正恩委員長の笑顔には、国家目標実現への自信と楽観すら感じられる気がします。

その一方、南北会談にこぎつけるまでに、政府要人の度重なる粛清、金委員長の実兄である金正男氏の暗殺、そして招いた経済制裁による経済の混乱など、北朝鮮は国内外で多くの犠牲をもたらしました。

今回の平和プロセスが、金委員長と文大統領の単なるパフォーマンスではなく、北朝鮮の国民も含め、近隣諸国の人々がより幸福な暮らしを求めることができるような、未来に向けた一歩となることを期待します。

≪参考記事≫
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180428-00000531-san-kr
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平昌五輪と南北融和 [国際]

羽生選手の二大会連続金メダルに沸く平昌オリンピック。もう一つの話題が、北朝鮮の五輪参加に伴う、南北朝鮮の融和ムードです。

北朝鮮と韓国の緊張が緩和されること自体は、メリットも無いわけではないでしょう。また、北朝鮮の選手や応援団が韓国を実際に眼で見て、北朝鮮と比較することは、南北朝鮮の交流としては、長い目で見てよいことかもしれません。

一方で、河野外相が批判するように、この融和ムードが世界や北朝鮮に誤ったメッセージを与えないよう、日本を始め関係国は注意を払う必要があるでしょう。具体的には、核放棄や拉致問題の前進を求める姿勢は変わらないということです。

現在北朝鮮に経済制裁を課している諸国も、北朝鮮との対話を閉ざしているわけではなく、北朝鮮の核放棄が対話の前提にあるという点で一致しています。そして、この圧力には米韓同盟を結ぶ韓国も当然含まれているはずです。

朝鮮と韓国の融和ムードは、核放棄無しの対話について北朝鮮に期待を持たせるものであり、かつ、北朝鮮のさらなる核、ミサイル開発の時間稼ぎに使われることが懸念されます。その結果、北東アジアにおける緊張は高まることになります。

もちろん、北朝鮮の核保有を認めるのであれば、この融和の動きは手放しで喜べるものといえるでしょう。しかし、日本をはじめ国際世論は、北朝鮮の核放棄を強く求めており、韓国もそこには同調していると思います。

南北朝鮮の融和ムードが、北朝鮮を巡る各国の足並みを乱すものなのか、もしくは朝鮮半島の非核化に向けた韓国の深謀遠慮なのか、北朝鮮の外交的得点なのか、それらに対し日本はどう対応すべきか、オリンピックの盛り上がりは別として考えるべきだと思います。

『参考記事』
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018021700227&g=prk
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またも動くゴールポスト?慰安婦問題の日韓合意対応 [国際]

いわゆる慰安婦問題に関する日韓合意につき、韓国の文大統領が事実上の追加措置を日本に求めている件。個人的には、「最終的不可逆的な解決」としての日韓政府間合意だったにも関わらず、新たな対応を期待する韓国に対し、深い失望を感じています。

もっとも、韓国側は、合意の再交渉は求めておらず、また、合意の履行についても、全面的に放棄したわけではなさそうです。その意味では、今回の韓国の対応は、依然として韓国の国内問題と考えるべきだと思います。
日本政府としては、引き続き合意の存在を前提として韓国にその履行を求めるとともに、過激な世論に引きずられた過剰反応によって日本の国際的なイメージが低下するのを避けるよう、注意して行動すべきでしょう。

韓国は、いわゆる慰安婦問題への日本の対応を通じ、日本が女性に対する性的な暴力に対し寛容であるという、ネガティブな国際世論を作るよう動いてきた節があります(それが韓国の国益にどうつながるのか、私には理解できませんが。。。)。

したがって、今回も、国際世論の視点で日本がマイナスにならないような配慮が必要だと思います。合意への対応とは別に、日本が女性への性暴力被害に対し前向きに取り組んでいる姿勢は、これまで以上に強く示していく必要があるでしょう。

≪参考記事≫
https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20180113-00000812-fnn-int


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