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嫌われ松子 [その他]

そういえばこの間『嫌われ松子の一生』を見た。

たぶん以前にも見たことがあったと思うし、場面場面は覚えてたんだけど、改めてちゃんと見てみる。

楽しかったし面白かったけど、なんというか、非常に、身につまされた。

病気の妹が何かと目をかけられがちな家庭に育った松子。変顔を覚えたりなんだり、最初は父の気を引くことに懸命で、父の希望に沿うように教師になるも、生徒に修学旅行費か何かの横領の濡れ衣を着せられて失職。

妹の惜しむ声を背に家を出て、幾星霜。

その後様々な男と付き合い、愛し、捨てられ、うち一人を殺し、刑務所に入ったり、ヤクザと付き合ったりなんだりして、最後は、荒川のほとりのアパートで独り暮らし。自暴自棄に陥り、容姿も醜く太り、光GENJIと荒川の流れにわずかな慰めを見出す日々。

そんなある日、服役時代に知り合い、その後社長業で成功した女とたまたま病院で遭遇。彼女からかつて身につけた美容師としての技術を活かして働かないかと勧められる。

一度は断り、名刺も荒川の河原に捨てたが、死んだ妹の髪を梳く自分の幻想を見てほのかな自信に火をともし、捨てたはずくしゃくしゃの名刺を荒川の河原でどうにか探し出す。

ところが帰り際、河原で遊んでいる中学生たちを注意したところ、逆恨みされ、もさもさ歩いているところをバットで殴られ撲殺されてしまった。

享年、53歳。

そんな一生。

ダメダメな生涯として笑うのは簡単だ。

でも、ちょっとしたボタンの掛け違えが重なってどんどんどんどん世間的な幸せから遠ざかっていく様は、正直、他人事とは思えない切迫感がある。

そして中谷美紀演じるちょっとおバカな松子が、ときにはミュージカル的な演出で、ときには凄絶な演技で、喜び、怒り、戸惑い、悲しむのがどうにもかわいらしく、美しく、そして果てしなく切ない。

成功者だろうとそうでなかろうと、人の一生とは、存外、こんなものではなかろうか。

取るに足らない自分の一生だし、松子のように演出されることは無いだろうけど、なんとはなしに、もう少しでも生きてはみようと思った、そんな気持ちにさせる映画だった。

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