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『グイン・サーガ』へのささやかな思い [読書]

栗本薫さんが亡くなって、もう10年か。

それを知ったとき、読み続けていた『グイン・サーガ』への印象が、
ガラリと変わったのを生々しく覚えている。

一言で言えば、自分とパラレルなもう一つの世界は、動きを止めたということ。

15歳くらいから読み始め、大学在学中には、リアルタイムの新刊に追いついた。
僕にとって、『グイン・サーガ』は物語ではなかった。 むしろ、外国の「ニュース」だった。

豹頭の戦士を中心に動く世界。

そのうねりに人々は飲み込まれ、ときには従い、ときには抗う。
飯を食い、酒を飲み、恋をし、戦い、祈り、そして生きる。
英雄も民も、悩み、苦しみ、己が運命を全うする。

王侯貴族も市井の民も変わらない。それぞれの懸命な生き様。
僕にできるのはただ、胸を躍らせてそれらを見守るだけ。

そして、それぞれの人物の行く末に一喜一憂し、世界の動きに思いをはせる。
見知らぬ外国よりも、ずっとずっと、 グイン・サーガの世界はリアルだった。

そんな世界が動きを止めたのだ。

動きを止めた世界は、ようやく、 「物語」という結晶になったのだろう。

やれやれ。

今でも、『グイン・サーガ』が書き継がれているのは知っている。
しかしそれはやはりニュースではなく「物語」なのだと思う。

久しぶりにじっくりと、ニュースではない、物語を読み返すことにしようかな。

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