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安倍政権の終わりに関する素人雑感 [政治]

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日本憲政史上最長の在任期間を誇った安倍総理。それが体調不良等を原因とする安倍総理の辞意によって、幕を閉じることになった。いろいろ思うところはあるが、素人なりに、まずは駆け足でざざっと振り返ってみたい。

1:政権運営について

今次の安倍総理の政権運営でまず感じたことは、過去の政権の失敗例をよく勉強して同じ轍を踏まなかったことと、日本国憲法と法律を巧く使い選挙できっちり勝つことを意識していたことだった。

この二つは相互に関連する。過去の政権の中でも、自身の第一次安倍政権と、民主党政権を参考にしたのが大きかったのではないか。前者では参議院選挙の敗北によるねじれ国会と相次ぐ大臣の不祥事で一気に支持率を下げた。後者では、当時の鳩山総理自身の不祥事、財政や安全保障をめぐる政権内の迷走、そしてやはり参院選の敗北、さらに小沢一郎氏と反小沢氏を巡る政権内の権力闘争。

今次の安倍政権では、不祥事を起こした閣僚は盟友の甘利氏も含め割と早めに辞任したし、石破氏をはじめとする党内の反対派の封じ込めにはほぼ完全に成功した。加えて、適切なタイミングとイシュー設定での衆議院解散で野党を揺さぶり付け入るスキを与えなかったし、参議院選挙でも負けなかった。安倍政権を巡るスキャンダルは数々指摘されたけれども、鳩山氏のように、総理自身に法的責任を問われうるような事態やそれを示す証拠が出されることはついになかった。

支持率を一定の範囲で維持し、かつ選挙で勝ち続けた政権運営は、民主政治の王道を行くものと言っても過言は無かろうし、何やら職人芸じみた凄みと安定感を感じた。むろん、それを実現したのは安倍総理個人だけではないにしろ、そのチームの中心に安倍総理が最高責任者としていたことは間違いなく、彼の功績に帰してもよいとは思う。

2:経済政策について

安倍総理と言えば、やはりアベノミクスと言われた経済政策を挙げざるを得ない。おそらく、改革と財政均衡に明け暮れた近年の日本の政権ではじめて、デフレが問題であることを直視し、金融緩和と財政出動を軸としたデフレ脱却施策を主導した。これにより過度な円高が是正され輸出産業が息を吹き返し、若年層の雇用が大きく改善されたことは評価して良いと思う。

一方で、産業界や財務省の支持をつなぎとめる意図があったのかもしれないが、デフレ脱却を掲げているにも関わらず2度の消費増税に踏み切り、経済成長に大きくブレーキをかけた。また、アベノミクスにおいて、金融緩和こそ大胆に行われたが、財政出動やいわゆる成長戦略については今一つ及び腰で、掛け声倒れの感は否めなかった。また、日本の消費支出が伸びない原因の一つでもある賃金デフレについて、経済団体への賃上げ要請は行ったにせよ、サービス産業への波及は決して強いものではないかった。

結果、デフレ脱却が必要という認識とそのための手段に整合性が無い印象を与え、掛け声倒れになってしまった印象は否めない。

3:その他国内政治について

安倍政権では、過去の政権でやり残したことを粛々と実施してきたという印象もある。例えば、20年以上前から議論されてきた、いわゆる共謀罪規定を盛り込んだ法改正により、国際組織犯罪条約の批准を可能にしたこと。主に米国との情報共有を円滑にするための、特定秘密保護法の成立。一定範囲での集団的自衛権行使に踏み込んだ安全保障法制など。さらに言えば、個人的には評価できないが、2度の消費増税もここに含めてよいだろう。

これらは、それぞれ国民的な議論を巻き起こし、一歩間違えば政権がひっくり返る可能性もあったが、それを無難に乗り越えて政権を維持した政治力は、やはり評価に値すると思う。また、例えば入試における英語民間試験の導入や、東京オリンピックのスタジアム建設など、撤回するところは撤回する柔軟性があったことも、ユニークなところだった。

加えて、天皇陛下の生前退位に伴う各種調整について、大過なく、また政治や経済上の停滞も無く、上皇の退位と新天皇の即位を実現させたのも見事だった。

ただ、安倍総理本人も悲願としていたであろう憲法改正について、国会で十分な議席を確保しながら発議や国民投票ができなかったことは、やはり残念ではあった。

4:外交について

個人的な印象として、政権の安定がモロに影響するのが、やはり外交関係だと思った。日本にとっての安全保障上の問題は、中国と北朝鮮であり、前者については、この8年弱でその野心が明らかになり、包囲網といってもいい体制を作り上げたのは見事だった。北朝鮮については、拉致問題の解決や進展がかなわなかったのは痛恨だが、暴発を抑えているのは、一つの成果だと思う。

安全保障法制や特定秘密保護法の成立などにより、民主党政権時代に損なわれつつあった同盟国アメリカとの関係を強化できたのも、良い点だろう。

また、日韓関係については、河野談話の作成に代表される、80年代辺りからの水面下の忖度関係を、ルールと交渉の関係にシフトさせたのは評価できると思う。慰安婦合意などで、問題を一つ一つ解決しようとしてきたのも事実だ。

一方で、先述の北朝鮮拉致問題や、北方領土問題をはじめとするロシアとの平和条約締結に進展が無かったのは、大いに残念であったと思う。


さて、北朝鮮拉致問題、ロシアとの平和条約締結、そして憲法改正等、残された課題も少なくない。しかし結局、安倍晋三氏は、周囲の環境や人々に恵まれたことは大前提だし、百点満点には遠いとしても、総理大臣として優れた実績を挙げたのは否定できないと個人的には思う。安倍晋三氏が出来なかったこと、もしくは、そのやり方に不備があった点は、以後の後任者が改めていくべきなのだろう。

今後、安倍政権については、様々な情報が開示されるだろうし、専門的な研究がなされるだろう。歴史的な評価も、高評価低評価含め、いろいろ変わってくるのかもしれない。ただ、安倍晋三氏がそれなりの誠意をもって総理大臣としての仕事をしてきたことは、間違いないと思う。

やはり最後は持病に伴う辞任。何はともあれ、今は、後任選出後、安倍晋三氏自身が療養に専念し、健やかに過ごされることを祈りたいものである。




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