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3.11。9年前のある個人的な記録。 [事件]

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以下の文書は、2011年3月12日の夜に書いたものです。


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昼過ぎに起きた休日、国立新美術館の「シュルレアリスム展」を見に行く。

六本木で降り、住宅地の合間を縫ってミッドタウン方向へ向かうと、頭上の電線がやたら揺れている。風もそんなに強くないのにといぶかしく思えば、近隣民家から、わらわらと人が出てきた。なんなんだ。

ふと頭がふらつく。素面だから二日酔いのはずは無い。
そうか。自分ではなく、地面が揺れているのだ。

しゃがみこんで揺れが治まるのをしばらく待ち、美術館へ。

一応、実家に東京で地震があった旨伝える。

美術館でも地震の影響は大きく、チケット売り場は一時閉鎖。館内に入場制限が敷かれているらしい。入場制限が解かれた後、「シュルレアリスム展」へ。

マグリット、ダリ、マックス・エルンスト、ミロなど既知の作家の他、アンドレ・マッソンやヴィクトル・プローネルなど、初めて見るものに目を凝らしていると、地面が動いた。マグリットの棺のオブジェを中心に、四囲に絵画のめぐらされた展示室、床には、自分を含めしゃがみこむ人々が。

その後1~2度揺れつつ、無難に鑑賞を済ませる。ヴィクトル・プローネルを知ったのが収穫か。

「シュルレアリスム宣言・溶ける魚」(アンドレ・ブルトン)の文庫と、展覧会の図録を帰り際に購入する。

用があったので新宿に向かおうとしたが、地震の影響で、電車が止まっている。しょうがないので近所のファミレスでランチ。ミラノ風ドリアとほうれん草ソテーで、500円弱。

電車が動くまで時間がかかると踏んだので、持っていた本、「輝ける闇」(開高健)をファミレスでこってりと読む。

従軍記者としてヴェトナム戦争に参加した際の記録文学。大上段の思想や感傷よりも、冷静かつ的確な言葉が描く細部は、はるかに説得的に戦争を語る。半分ほど読み終えると、一時間半ほど経過。何がしかの動きがあろうと、駅に向かってみると、駅の階段に老若男女しゃがみこんでおり、構内も思い思いに座り込んでいる。

なんなんだ。

改札近く、メガホンを手に説明する駅員によれば、地下鉄は当面再開の見込みはないらしく、また、

「本日はJR線は運行停止を決定しました」

と預言者のごとくのたまう。まだ午後六時なのに。さすがに六本木から自宅は、徒歩では無理な距離。まいったなあ。

とりあえず、用があった新宿に徒歩で向かうことに。

青山から四谷方向を経由で向かったのだが、交差点などは、歩く人々の姿がひしめく。コートやスーツ姿で、会社帰りなのだろう。途中の公衆電話には、人々が長い行列。

そういえば兄からはけがはしていないとメールがきた。

途中信濃町で学会関連の施設を見に寄り道などしたものの、一時間半ほどで新宿到着。

用事があった店に入ってテレビを見ると地震のニュース。ここでようやく、地震が東北太平洋岸であったことに気づく。八戸とか、宮古とか、大船渡とか、気仙沼とか、仙台とか。

というか実家含まれてんじゃん。しかも震度7って。阪神大震災よりでかいんですけど。

モニターでは、津波が港を飲み込む映像が繰り返し繰り返し。王蟲の群れですか?これは。

遅まきながら事態のヤバさに気づく。実家にメール。電話はもちろんつながらない。

JRが動かなければ帰れないので、いささか途方にくれていたところ、都営新宿線が復旧したらしく、最寄りではないが近くの駅まで行けるので、そこから歩いて帰ることに。

で、都営新宿の改札にくれば、遅々と進まぬ数百メートルの行列。すぐ脇には同じレベルで大江戸線改札への行列が。どこのディズニーのアトラクションですか?

たっぷり一時間は並んでホームに乗れば、ラッシュアワー顔負けの混雑。たまたまドア横の隙間に滑り込むことに成功。

そこから出発まで、さらに15分ほど経過する。

時間調整等もあり、速度も通常よりは遅いものの、どうにかこうにか家路に向かうことには成功。

電車内のオブジェと化しつつ、「輝ける闇」の続きを読む。人いきれに蒸されつつ、ヴェトナムの湿気を思う。人々が銃撃から逃れ疾駆して小説が終わりしばらくすると、終点本八幡までたどり着いた。電車は惜しみなく乗客を嘔吐する。

都営の駅から部屋まで徒歩30分程度。

飲み物とおにぎりでも買おうと思い、駅近くのコンビニを覗くと、人がたくさんたむろっており、おにぎり、パン、サンドイッチ、弁当類は何も無い。無い。

5分ほど歩いて別のコンビニに入っても、事情は同じ。仕方ないのでスポーツドリンクとカニカマを買って、食べながら歩く。

深夜1時を回っているが、道を行き交う人は減らない。車道は車の長い列。おそらく、タクシーで帰宅するのも大変だったろう。

ようよう自室にたどりつき、メールを開くと翌日会社は臨時休業。まあ、しょうがないことだ。

しばらくすると弟と電話がつながり、惨状を聞く。家族に怪我人は無いが、ライフラインの切断が堪えているとのこと。

ネットニュースを見れば仙台市内沿岸部で2~300人死亡の見込みとのことで、あまりの多さに、数字が想像できない。

いやはや、シュルレアリスムよりシュールな出来事。

とりあえず、昨日の一個人の記録までに。



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