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ストロングゼロ、あるいは文化について [食べ物系]

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ストロングゼロをはじめとしたアルコール度数の高い、いわゆるストロング系チューハイについて、医師が警鐘を鳴らしているそうだ。

<参考>
https://togetter.com/li/1450377

とはいえ、ストロング系チューハイのアルコール度数は9%程度。5%程度のビールよりは高いものの、日本酒やワインは15%前後だし、焼酎は20~25%が主流。ウィスキーやウオッカやブランデーは40%くらいのものが多いだろう。それらの一般的なアルコール飲料と比べて、ストロング系チューハイのアルコール度数は、決して高いとは言えない。

ではなぜ、このような指摘が出てくるのか。問題は、アルコール度数ではなく、あの手の酒における文化の不在ないしは貧弱さだと個人的には思うのである。

山崎正和のうろ覚えの受け売りだが、覚せい剤とかの違法な禁止薬物と、煙草やアルコールとかの合法な嗜好品の違いは、文化、もっといえばその摂取による効果(陶酔や酩酊とか)を小刻みに先延ばしするモノや空気があるかどうかかもしれない。

違法薬物は打ったり吸ったりしていかに早く体内に成分を入れるかが全てだけど、煙草や酒はそうではない。成分を体内に入れるにあたって、様々な先延ばしがある。

酒で言えば、例えば日本酒やワインには、いい肴が無いと寂しい。いいウィスキーやブランデーなら、氷やグラスにもこだわってみたい。場所だって、お洒落なバーで飲む酒と行きつけの小料理屋で飲む酒は違うし、気心の知れた知人と飲む酒はまた格別だ。

そんな感じで、人との会話であったり、洒落たバーの雰囲気であったり、美味い肴であったり、酩酊という効果をまっすぐに得るには、酒には不純な背景が多すぎると思う。泥酔するまで飲めば、他人と会話はできなくなるしバーからは追い出されるし食べ物はまずくなる。そこには、自ずから一定の節度が生まれる(はず)。

酩酊の小刻みな先延ばしとそこから生まれる一定の節度は、ある種の文化と言っても過言ではないのではなかろうか。

ストロング系チューハイには、どちらかというと「手っ取り早く酔いたい」というニーズに訴求しているように見える。それは酒としての文化が未成熟な証ではないか。個人的には、度数が高いのもアリとは思うけど、それが何らかの文化を形作るのでなければ、つまり単に手っ取り早い酔いを求めるものだけになってしまえば、違法薬物に限りなく近いものになってしまう。

ストロング系チューハイへの批判は、大げさに言えば、メーカーや消費者の文化形成力への批判だと思うのである。

酒は酔うために飲むものだけれども、酔うためだけに飲むのではない。その非常に曖昧な矜持としての一線、つまり文化を育み守り続けることが、酒と違法薬物を隔てるものであるはずだ。

そう、全ては文化なのだ。




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