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『マハン海上権力論集』~シーパワー、アメリカ、中国~ [読書]

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『マハン海上権力論集』(麻田貞雄訳・編講談社 学術文庫)読了。

19世紀末、海上通商路の発展を包摂する海上権力(シー・パワー)の概念を提唱した著作で、後の海軍戦略理論に大きな影響を与えた、マハンのダイジェスト。日本海海戦の作戦立案で名高い秋山真之が滞米中にマハンに師事したことなんかは、有名かもしれない。

一読した限り、軍事力を中心とするパワーポリティクスの正統的な後継であり、また、米国国権拡張のための海軍の充実を強く訴える内容。

当時のアメリカは、ようやく太平洋岸まで領土が達したところ。また、南北アメリカ大陸への不干渉を欧州に対して主張する「モンロー主義」の影響の中、海を越えて国権を拡張させる政策に、米国内ではまだまだ反論も大きい状況だった。

つまり、19世紀末、アメリカは現在のような大国ではなかったのだ。

そんな現状に、マハンは果敢に挑戦する。切削進むパナマ運河への影響力保持や、ハワイへの進出などを著作の中で提言。その考え方の多く、特に太平洋への勢力拡大は、海軍に造詣の深いセオドア・ルーズベルト大統領の政策に採用され、曲折を経つつも米国の国是の一つとなる。

歴史にifは無いとはいえ、マハンの提言が無かったら、また、もしマハンの提言を米国政府が採用しなかったら、と考えるのは興味深い。

おそらく米国は、カリブ海やメキシコ湾を勢力圏とするローカルな大国のままで現代を迎え、中国大陸を巡り日本と利害を衝突させることはなかったろう。

マハンの議論で他に興味深いのは、日本や中国といった非キリスト教文明への懸念である。彼の懸念は、半世紀後に太平洋戦争として、そして一世紀を超えて、中国の台頭として的中する。

さて、21世紀。東シナ海、日本海において、中国は、マハン流海上権力政策の正当な後継者と言えるだろう。それらの海を超えて、太平洋をどうしたいのか。中華帝国の再来を目指す中国共産党政権の、識見が問われる今日この頃。

マハンが生きていたら、国際政治の中心が太平洋に移りつつあるこのご時世をどう解釈するだろうかと、だらだら想像してみるのである。




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