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香港大規模デモ、統治者と被統治者のコミュニケーションの価値 [国際]

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いわゆる「逃亡犯条例」の改正を巡って起こった香港のデモは、参加者約200万人という、香港史上最大にして世界的にも稀有な規模にまで達した。

問題となった改正条例案の要点は、香港から中国共産党政権への犯罪者引き渡しを可能にすること。英国系のコモン・ローを採用した法体系を持つ香港において、本来、コモン・ローを共有しない地域への犯罪者引き渡しは否定されており、特に中国共産党政権への引き渡しについては明文で否定されていた。

実際、中国の刑事司法制度に対する香港の、そして国際的な信頼は決して高くない。香港人からしたら、中国の不透明な刑事司法で裁かれる危険が増すことに、素直に恐怖を覚えただろう。

幸いなことに、デモの結果、林鄭月娥・香港特別行政区行政長官が改正条例の審議の延期を表明したが、改正そのものが撤回されたわけではなく、依然予断を許さない状態ではある。

一連の条例改正の流れやデモの動きをざっと見て考えさせられたのは、自由な選挙であったり、政治への報道や批判の自由であったり、つまり、統治者と被統治者とのコミュニケーションの存在の必要性である。言い換えれば、いわゆる近代の自由主義・民主主義の価値と言ってもいいかもしれない。

自由な選挙や自由な政治批判は、統治者から見れば、確かに煩わしいものであるかもしれない。しかし、その一方で、民意を測り、政策の軌道修正を行う契機、すなわちコミュニケーションの指標となるはずだ。それは、天安門事件のような多数の死者を出した悲劇や、多くの人を巻き込む経済的混乱を含む大規模デモや、外国からの人道上の批判や介入に至る前に、被統治者とのコミュニケーションを通じて問題を解決する可能性を開く。

今回香港でかくも大きなデモとなったのは、統治者と被統治者のコミュニケーションのチャンネルが存在しなかったというのが大きいだろう。しかし、コミュニケーション崩壊による悲劇は、中国本土での方が、より大きな影響を与えうる。民衆を軍事力で武力弾圧し、多数の死者を出した89年の天安門事件は、未だに中国共産党政権の汚点であり、共産党政権が改革されない限り、今後もそのようなリスクは大いにあるだろう。

香港に対する、中国共産党政権の影響力は益々高まっているらしい。今回のような大規模デモがもし避けるべきものであるとするならば、その方法は、公権力による監視や統制を強めることではなく、より報道や批判、そしてより小規模なデモを行う自由を保障することがさらに大切なはずだ。

香港のデモを見るにつれ、願わくは、香港を一党独裁の共産党政権で塗りつぶすのではなく、中国本土と比べて相対的には自由かつ民主的な政権運営の経験を通じ、今回のデモが中国本土の体制改革のきっかけに繋がることを心から祈りたい。

そして、曲がりなりにも自由な選挙があり、自由な政治報道や意見表明ができる日本の環境と、立場は様々であろうけどそれを守っている多くの人々に、改めて敬意と感謝を表したいと思った次第である。

<参考記事>
https://blogos.com/article/384590/




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