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プーチン後はいかに?近未来ロシアに関する床屋政談 [国際]

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■ロシア経済、国家主導に限界 1~3月GDP0.5%増(日本経済新聞)

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44998470Z10C19A5FF8000/

ロシア経済に停滞が続いているそうだ。

確かに、かつて2000年代にはBRICsの一角と呼ばれ、原油価格の高騰を背景に経済大国への道を進むのではないかと言われた姿は、今のロシアからは窺うことが出来ない。そして、経済運営の失敗は、2018年に80%近い得票率(苦笑)で圧勝したプーチン大統領にとって、アキレス腱になりかねないのではないかと、個人的には懸念しているのである。

そんなわけで、プーチン政権の末期とその後といういわば近未来ロシアについて、素人が知りうる範囲でだらだらと考えてみたくなったので、素人なりにまとめてみることにした。

さて、少なくとも、民主制を標榜する政治において、もしくは政治全般においてと言っても過言ではないかもしれないが、構成員を食わせること、すなわち経済はトップイシューだ。中国共産党政権が曲がりなりにも一党独裁でやっていけるのは経済を成長させたからであり、「明るい北朝鮮」と揶揄されながらもシンガポールにおいてリー・クアン・ユーが指導者であり続けられたのも経済成長のおかげだ。湾岸戦争の勝利で絶大な支持を得たはずのブッシュ大統領(父)が大統領選で敗れた相手は「It's Economy,Stupid!」をスローガンにしたビル・クリントンである。

さてロシアはどうか。

冒頭のニュースのように、ロシア経済は停滞が続いている。要因としては、記事にもあるように国家主導型の経済の限界であり、資源依存型の経済の限界であり、加えて、クリミア併合およびウクライナ対応を原因とした経済制裁である。

これを打開するには、インフラへの投資、新規産業を生むための規制緩和、外国などからの資本の導入が必要であろう。しかし、国家主導の経済では規制緩和は困難だろうし、経済制裁を受けている中で外資の導入を積極的に進めることはできない。現在のところ、ロシアがウクライナへの介入を停止する気配は全く見られない以上、経済制裁は続くだろう。また、報道等で見る限り、インフラへの投資も活発とは言えないようだ。

この状況からは、プーチン大統領は、情報将校としてのバックグラウンドからか、経済に関してはあまり知見を持っていないし、知見を持った人々を周囲に置いていないのではないかと疑わしくなってしまう。少なくとも、原油価格が高く経済が好調でBRICsと持てはやされた時代に、将来のリスクに備えて、インフラ投資や産業構造の転換に備えた新産業の創出への投資をしておくべきだったのに、完全に出遅れてしまった感がある。

もちろん、ソ連崩壊からロシア連邦への移行において、エリツィンから引き継いだ混乱した国家をどうにかこうにか纏め上げた手腕は見事であるし、精力的な執務姿勢も素晴らしい。ただ、現代国家の首脳として経済に必ずしも強くないのは、そしてその欠落を補う措置を取らないのは、大きな欠点だと思う。

プーチン政権が手をこまねいて経済に悪影響が出れば、当然政権の支持率は下がる。支持率が下がれば、選挙で議会の多数派を握ることはできないことから、政権は選挙干渉を行うことになる。選挙干渉を行ったとしても、国民の不平の原因である経済の改善は望めないことから、不満は溜まる。不満が溜まれば支持率は下がっていくだろう。今のロシアはこうした悪循環の中にいるのではないかと思われる。

さらに、『プーチンの実像』(朝日新聞出版)等によると、プーチン政権において、プーチン大統領個人への権限集中に拍車がかかっており、そのことも、この傾向を推し進めているのではなかろうか。確かに、支持率低下の中で自分の求心力を高めるために権限を集中させたいと言う気持ちは分かるが、プーチン大統領が経済政策に強くないのだとしたら、経済の停滞は進むし、支持率低下にも歯止めがかからず、さらなる選挙干渉と支持率低下に苦しむことになるだろう。

権限集中を進めるプーチン政権において最大のリスクは、権力継承のためのルールが存在せず、プーチン以後のロシアの姿が全く見えないことである。

例えば、日本では政権与党の有力政治家が次の総理大臣になるだろう。一党独裁で政治が不透明と言われる中国でも、共産党内の序列はそれなりに判明しており、全くの抜擢人事はありえない。アメリカも、大統領選の候補者たちは早くから報道に晒されている。ロシアはどうか。

現在においては、完全にプーチンの胸三寸であり、しかも求心力を失わないために、最後の最後まで後継指名はしないだろう。これでは、基本的にロマノフ家の血縁者からツァーリを輩出したロマノフ王朝よりも透明性が無いではないか。

加齢による衰えや、高度な緊張を伴う生活が続くストレスは、いかに超人的な体力・精神力を誇ろうと、プーチンを蝕むはずである。プーチンが権限を委譲し、プーチン個人に依存しない政治や行政組織を作るのでなければ、権限を集約させたプーチンの判断ミスは、ロシア国内外に大きな悪影響をもたらすだろう。

プーチンの任期は2024年。健康状態にもよるが、終身大統領を目指したとしてもおかしくない。それとともに、衰えによる判断力の低下やミスのリスクは上昇する。また、プーチン個人の権限が強く、制度が事実上崩壊している以上、プーチンの指導力が衰えている場合には、次の政権が決まるまでには、ソ連崩壊とまでは行かなくても、相当の混乱が予想される。

日本としては、プーチン政権の末期のリスク向上と次期政権が決まるまでの間の混乱を予期しておくべきであるとともに、ポストプーチンを見据え、プーチンとの親疎に関わらず、将来の有力者候補と幅広く接触し、リスクヘッジをしておくべきだろう。それと同時に、その時期のロシアの混乱が北東アジアの安全保障に与える影響について、シミュレーションしておかなければならないと思う。

そんな、ある春の夜の床屋政談。





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