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ある休日、イタリアワインとの日常 [日常]

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休日、文庫本をポケットに入れて訪れるはサイゼリヤ。
最寄り駅近くにあるのである。

サイゼリヤと言えばイタリアワイン。
知人友人と1500mlのマグナムボトルではしゃぐのも楽しいが、
一人なので控えめに、250mlの赤のデカンタで。

お気に入りのつまみは、ホウレン草のソテーと、
半熟卵の乗った、柔らか青豆の温サラダ。

聞くとも無く耳に入るのは、若人連中のはしゃぎ声と 、
そして垂れ流される中年マダム方のおしゃべり。

それは、午後のサイゼリアのごくごく一般的な風景でして。

文庫本に集中すれば、1972年。

『ロマネ・コンティ1935年』(開高健)の稠密な文章に導かれ、
今にも、ビンテージワインの封が開けられようとしていた。

イタリアワインを飲みながら、フランスワインの粋を読む。

完璧に注がれたそのワインを飲んだ瞬間、
「小説家」と「重役」の二人は、激しい失望に囚われる。

要は、美味くなかったのだ。

ロマネコンティがこのような味になった背景に様々な思いを馳せつつ、
「小説家」は心中沸き起こる過去の逢瀬の記憶に身を浸す。

逢瀬の記憶と無残な老成を遂げたワインの味が縦横に絡まりつつ文章は進み、
ロマネコンティのグラスが澱だらけになったころ。

「小説家」と「重役」はその場を立ち去った。

文庫本から目を上げると、夕暮れ時のサイゼリヤの喧騒が。
テーブルには、グラス半分ほどの赤ワイン。

澱も何も出てこない赤ワインを飲み干して、598円の勘定を支払い、
僕はサイゼリヤを後にした。



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