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【警察組織】知ってるつもり?交通、生安、組対について [警察・刑事手続]

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警察と一言で言っても、その仕事の内容や仕事への考え方は、部門ごとに大きく異なるのが実際である。フィクションなどでは、いわゆる刑事部門や公安部門にスポットが当たることが多いのかもしれない。しかし、それら以外にも、日々の生活に密着した部門もあるし、存在は知ってるけど何しているか今ひとつ分からない部門もあるのではなかろうか。

そこで今回は、刑事でも警備公安でもない、交通部門と生活安全(生安)部門と組織犯罪対策(組対)部門を採りあげ、国の警察機関である警察庁における業務を中心に概説したいと思う。

1:交通部門~大正義「道路交通法」の守護神~

警察庁交通局を頂点とした交通部門の最大の特徴は、「道路交通法」に関するイニシアティブをがっつり握っていることである。道路交通法といえば、速度取り締まりはもちろん、道路の通行規制、駐車違反など道路交通に関してはまさしく憲法と言ってもいい法律。交通警察は、その改正や運用を一手にしている。

道路交通法の運用という意味では、自動車運転免許制度を欠かすことができない。自動車運転免許は、運転する人はもちろん、身分証明書としての価値もかなり高い。その保持者数は2018年で8000万人を超え、国民の三人に二人は保有している計算だ。8000万人を対象とする行政政策というのは、日本でもそうそうお目にかかれない、大規模なものである。

また、道路交通法は、頻繁に改正がされることでも知られる。例えば、飲酒運転規制の強化、駐車規制の強化、高齢者運転免許の見直し等々、枚挙に暇が無い。警察庁交通局は、ほぼ年中道交法改正のネタを検討していることに加え、上述の飲酒運転規制強化などの諸政策が特に大きな反対も無く、すんなり人々に受け入れられており、政策のプロモーションも巧みである。

このように交通部門は、道路交通法を軸とした、法政策のスペシャリスト集団なのである。

2:生活安全部門~法と政策のカオスにしてワンダーランド~

生活安全局は、刑事事件になる手前の様々な段階で警察が介入し、犯罪を抑止するのが主な任務である。当然、介入する根拠として、様々な法律や許認可を駆使する。そのため生活安全局も、法律や規制や政策を扱うことは交通局と同様である。ただ、何が違うかというと、その範囲の広さと脈絡の無さだ。

生活安全局が扱う法律は多岐に渡る。

・キャバクラや性風俗など風俗営業の基本法である風俗営業法
・古着屋や古書店などを規制する古物営業法
・セ〇ムやア〇ソックなどの警備業界を規制する警備業法(警備局の法律ではないことに注意!)
・探偵業法

といった業界を規制する、いわゆる「業法」の他、

・ストーカー規正法
・遺失物法
・銃刀法
・不正アクセス禁止法
・未成年者喫煙防止法
・未成年者飲酒防止法

など、道路交通法という大きな軸がある交通部門と比べて、大小取り混ぜ様々な政策分野を扱っているのがわかる。少年事件やサイバー犯罪と行ったいわゆる事件を扱うだけでなく、いわゆる「業法」やその他の法律を根拠に、様々な許認可行政を扱っていることが大きな特徴だ。

さらにいえば、交番やパトカーといった、鉄道警察隊といった地域警察や、知的財産関連、消費者問題、環境犯罪も、警察庁では生活安全部門の一つとされており、日々の暮らしの中で、交通警察と並び、よく接する部門と言えるのである。

このように、生活安全部門は警察の中でも、扱う分野の幅が極端に広く、他の一般の行政機関に近いところもある。いわば、様々な法や政策を駆使する、カオスにしてワンダーランドな世界なのである。

3:組織犯罪対策部門~刑事、生安、公安などのハイブリッド~

組織犯罪対策部門、特に警察庁刑事局組織犯罪対策部は、2004年に設立された比較的新しい部門である。その母体は暴力団対策部だったが、そこに、外国人犯罪対策、マネーロンダリング対策、そしてかつては生活安全部門が担当していた薬物・銃器犯罪対策を含め、役割が大きく拡充された。

組対は、犯罪の被疑者検挙を目的とするという意味では、刑事局と共通する。しかし、対象が組織犯罪であり、通常の犯罪捜査手法では摘発が困難であることから、様々な手法を用いているのが特徴である。

まず、組織犯罪対策処罰法における、通信傍受や、いわゆる共謀罪、刑事免責等によって、一般の刑事事件と比べて、捜査機関の権限がより強められている。

また、暴力団対策法を例にとると、暴力団という団体を定義・指定するとともに、その構成員の行為を行政命令で規制することにより、通常の刑法犯と比べて幅広く処罰の対象とすることが可能となっている。このように、法律と規制を用いて刑法犯の手前で警察が介入する仕組みは、生活安全部門の仕事の進め方に似ている。

さらに、犯罪を繰り返すことが疑われている組織に対しては、継続的な情報収集が不可欠である。そこで、組織内に情報提供者を求めることも行われており、その手法はテロ組織等の情報収集を任務とする公安警察に似ているところもある。

このように、組織犯罪対策部門は、刑事を軸としつつも、組織犯罪の特質に配慮し、生活安全や公安部門の知見を活かしたハイブリッドな構成になっているのである。


同じ警察でも、部門によって目的や考え方が異なる。フィクションの中や、自分が関わりを持った警察官がどの部門に属しているのか、またどの部門の経験が長いのかによって、その警察官の行動様式も変わってくる。警察を知り、民主的な手続きでコントロールし、そして楽しむためにも、警察への知識をクリアにしてみるのは、価値が無いわけではないと思うのである。



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