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その心余りて言葉たらず [その他]

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先日ふとだらだらと和歌を読む機会があり、いろいろあれど、
やはり在原業平が好みであると分かる。

高校時代教科書で読んだのがきっかけ。

それとなく面白く感じ、小遣いを工面して『伊勢物語』全文を買って読んだり、
国語の課題作文を全て伊勢物語調の擬古文で書いてみたり。

伊勢物語の中身や和歌の細かい文言などはほとんど忘れてしまっていたが、
老舗すっぽん屋の使い古した土鍋から立ち上るような、和歌の香気だけが、
そこはかとなく思い出される。

いろいろあるけど、最近の気分では以下の三首。

  月やあらぬ春や昔の春ならぬ我が身ひとつはもとの身にして
  
  忘れては夢かとぞ思ふ思ひきや雪ふみわけて君を見むとは

  つひにゆく道とはかねて聞きしかど昨日けふとは思はざりしを

古今集の割には技巧が少なく、直球なのが良い。
また、背景事情を知らなくて誤読しても、それなりに意味が通じるのも素敵だ。

古今集の序文では、編者の紀貫之に、

「その心余りて言葉たらず しぼめる花の色なくて にほひ残れるがごとし」

などとdisられていたが、三十一文字で完成しきった世界の中より、
むしろ追いかけても実在の無い残り香にこそ、心乱される思いがする。

そんな春の夜、業平の歌をもう一つ口ずさみながら眠りにつくとしよう。

  惜しめども春のかぎりの今日の日の夕暮にさへなりにけるかな

おやすみなさい



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