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今上陛下が「お気持ち」を表明。制度と個人の相克について [政治]

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8日、今上陛下が生前退位のご意向を示唆するいわゆる「お気持ち」を公表されました。

すでに80歳を超えられた陛下が、現行憲法における天皇制とご自身の地位について真摯にお考えになり、文字通り「全身全霊」をもっておつとめを果たされてきた思い、そして皇室のあり方を考え続けられてきた思いには、一人の日本人として、率直に感動を覚えました。

お気持ちの文言では、摂政の設置や公務の軽減では、務めを果たせない天皇の存在自体を解決することはできないということが示唆され、文字通り生前退位の制度上の検討を望まれていると考えられます。政府もこれを受け、皇室典範の改正や特別法の改正を含め、検討を始める模様です。可能な限り陛下のご意向に沿いつつ、今後の皇室制度の運用も見据え、国民的な合意を得て、かつ早期に結論が出ることが望まれているといえるでしょう。

それにしても、今回のお言葉も含め、改めて陛下のご公務などを調べてみると、その完璧主義とも言える姿勢には驚かされます。同時に、天皇という、いわば生身の個人と憲法上の地位が不可分な存在について、改めて思いを馳せるきっかけになります。天皇という制度は脈々と続いていても、今上陛下を含め、それを担う個人の性格や、職務に対する思いは相当程度異なるという当然の事実です。

例えば、87歳で崩御された昭和天皇は、70歳を越えた辺りから健康にご不安を感じ、周辺に退位について言葉を漏らしたりすることが無かったわけではないようですが、基本的には公務の軽減の方向で解決を模索しました。その前の大正天皇は、心身の関係から早期に皇太子(後の昭和天皇)を摂政に立てています。さらにその前の明治天皇の晩年は、健康状態の悪化と天皇ご自身の職務への義務感とのせめぎあいで、公務の軽減すら消極的なご意向だったようです。

直近数代を見ても、おそらく、過去の天皇のいずれも、自己の地位や職務、そして皇室の継続に不真面目であった方はいないと思います(これは日本国民として誠に幸運な話です)。しかし彼らであっても、晩年や健康問題への対処は様々でした。もちろん、憲法の違いなどに伴うそれぞれの時代の天皇の役割の違いや、客観的な情勢の違いなどもあろうかと思います。こうして見ると、今上陛下が今回表明した「お気持ち」は、天皇として、そして個人として、非常な微妙なバランスのもとに発せられたと思います。

今上陛下の率直なお気持ちにお応えするため、そして制度としての皇室を改めて考え、作り上げていくため、日本人に大きな宿題が投げかけられたと思います。

今上陛下の「お気持ち」に端を発した議論には、おそらく様々な意見が飛び交うことでしょう。真剣な議論は必要です。しかし、お互いの立場や正しさ、論理的整合性にのみ捕らわれ、意見が合わない人々が相互に罵りあい、国民の間に避けがたい分裂が生まれるような事態だけは、避けなければならないはずです。制度改正にあたる政治家はもちろん、有識者も、マスコミも、そして日本国民全体も、ある意味歴史の試練にあるといってもよいのではないでしょうか。

【宮内庁HP】
http://www.kunaicho.go.jp/page/okotoba/detail/12


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